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幻影の旋律
咎人の最期
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悲しいだけ……」
ケクロプスを見ていると胸が締め付けられるように痛い。
それはまるで、いつかの僕自身を見ているようで……。 あの頃の僕自身を見ているようで……。
と、静かに目を伏せた僕の頭にリゼルさんの手が乗った。 何をと思う間もなく、グシャグシャと乱暴な手つきで撫で回される。
「わっぷ」
「あいつはフォラスとは違うさ」
「でも……」
「あれが正しかったなんてアタイは言わないし、言ってやりたいことは五万とある。 けど、あんたはアタイらには敵意を向けなかった」
「でも、他の人には敵意を向けたよ。 キリトにも、アスナさんにも……」
「そりゃ、そいつらがあんたの邪魔をしたからだろう?」
「…………」
「あんたの復讐は目的も目標も見失わなかった。 目につく全てを殺そうとするあいつとは違うさ」
ぺしんと僕の頭を軽く叩いたリゼルさんは、それからもう一度笑った。
「あんたは悩みすぎさね。 物事ってのはもう少しシンプルで良いのさ。 あれは敵で、ニオとアマリを攻撃してるんだ。 《ぶっ殺す》理由としちゃ十分だろう?」
「リゼルさんは結局、
それ
(
ロリを攻撃したこと
)
が重要なわけなんだね」
「当然さ」
快活に笑う
リゼル
(
変態姐御
)
さんを見て、僕はついつい吹き出してしまう。
そう。 いかにケクロプスが哀れだろうとそんなことは関係ないのだ。 いつかの僕のようだろうと、そんなことは関係ない。
奴はアマリを攻撃した。 奴は僕の友達を攻撃した。
ケクロプスをぶっ殺す理由は、それだけで十分すぎる。
「……じゃあ、行こっか?」
「はっ、アタイは元からそのつもりさね」
ニヤリと笑って駆け出したリゼルさんと同時に僕も戦場を駆ける。
敏捷値の関係で先行する僕の後ろから響くリゼルさんの足音が、唐突に消えた。 《隠蔽》スキルからの派生スキル《
無音動作
(
サイレントムーブ
)
》を発動したのだろう。
リゼルさんの《隠蔽》は精度に特化した僕の《索敵》でも看破するのは難しいほどに極められている。 まして《索敵》が使えないこのダンジョンだ。 まともな手段で看破なんてできるはずがない。
これが他人であれば互いに巻き添えを気にして動けなくなるところだけど、相手がリゼルさんなら気にする必要はないだろう。
そう結論を出した僕は、後ろを気にすることなく雪丸を流しながら目一杯引き絞る。
「ーーーーっみんな退がって!」
恐らくは雪丸に灯った妖しい紅色のライトエフェクトに気がついたのだろう。 クーネさんが切迫した調子で指示を飛ばし、ニオちゃんとリンさんが慌てた様子でその場から離れる。 前線で同じく戦闘中のアマリはそんな指示なんてどこ吹く風だけど、僕も僕でアマリを気にせずに雪丸を振
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