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幻影の旋律
再会と抱擁
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しめ、柔らかい桜色の髪を手で梳いた。
「あはー、フォラスくんですよー」
耳のすぐ横から聞こえるアマリの声に心が洗われる。
こうして僕は久し振りにアマリと再会した。
「あのー、アマリさん。 そろそろ離してくれないですかね?」
「フォラスくんですよー」
「いやいやアマリさん。 さすがにハグが強烈と言いますか……」
「あはー、フォラスくんですよー」
「ほら、僕のHPが少しずつ削れてるんですけど?」
「フォラスくんフォラスくんフォラスくんですよー」
「ああ、聞いてないんだね……」
まるで聞く耳を持たないアマリにため息を吐きつつ、僕はそれでも笑っていた。
膨大な筋力値を用いたハグは結構な速度で僕のHPを削っているけど、それはどうにか特製のポーションを飲むことで相殺可能だし、さすがのアマリも僕をこんな形で殺したりはしないだろう。 放っておけばそのうち止めてくれるはず、と適当に納得しながら、僕はアマリの同行者に目を向けた。
「ボス戦以外で会うのは久し振りだね、リゼルさん、レイさん」
「ああ、久し振り。 元気だったかい?」
「もちろん。 アマリがいれば僕はいつでも元気だよ」
「うわ、会って早々に惚気られた!」
リゼルさんとレイさんの幼馴染コンビは、今日も変わらず平常運転のようだ。
状況を見る限り、ここに出たであろうボスをアマリと協力して殺してくれたらしい。 つまり、先ほどの爆裂の音はその戦闘中のものだろう。
無茶をするアマリを諌めながらのボス戦は大変だっただろうと同情しつつ、もう1人の同行者に目を向ける。
そこにいたのは、知らない男の人だ。
と言っても、僕はその人を情報として知っているし、ボス戦でも何度か見たことがあるので、まるっきり知らないわけではない。
ヒヨリさんとティルネルさんのパートナー。 クーネさんたち《片翼の戦乙女》の設立メンバーの友人であり、友達の少ないキリトの友人でもあるその人は、周りから《リン》と呼ばれているプレイヤーだ。
アインクラッドに於いて数少ない、隠しクエスト攻略の専門家。 アルゴさんとの仲も良好らしく、彼女が発行している攻略本に記載されている隠しクエストの項目はその殆どが彼からの情報だとか。
僕やキリトと同じく、全身を黒系統の装備で統一しているその人は僕を見て、それから僕に引っ付いているアマリを見て微妙な顔を浮かべた。
「ふむ……」
その表情とオレンジに染まったアマリのカーソルを見た僕は、それで大体の事情を察した。
「リンさんも、久し振りだね」
「っあ、ああ、久し振りだな」
僕の挨拶に若干詰まったお兄さんは、それでもすぐに平静を装って返してくれる。
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