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幻影の旋律
黒の土人形
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な予感も束の間。
一瞬の静寂を破るように、8本の刃が一直線に少女を目指して殺到し、そしてその身を穿つ。
8回もの衝撃をほぼ同時に受けた少女はさすがにぐらりと傾いだ身体をどうにか立て直して眼前を睨むが、そこには既にゴーレムはいなかった。 そう知覚した時には、先ほどまでに倍する衝撃を自身の右側から受けた。
そこから始まった怒涛の連撃に少女は抵抗する術を持たない。
せめてもの反撃をと思い、狙いもつけずに《ディオ・モルティーギ》を振るうが当たらない。 ならば爆裂の衝撃波に巻き込もうと《ディオ・モルティーギ》を振り下ろせば早々に範囲外へと逃れられてしまう。
微々たる速度で減少していくHP。
そのスピードはかなり遅いが、それでも少女が有するバトルヒーリングスキルでは回復が追いつかない。 かと言ってポーチにしまってあるポーションを飲もうにも、攻撃の衝撃が意外にも強く、身体を揺さぶられて満足に取り出せない上に、苦労して取り出したポーションは何かに攻撃されて粉々に砕け散った。
移動はどうにか視界に捉えられる。 攻撃も辛うじて視認可能だ。
だがしかし、それに反応するには、少女自身のスピードが絶望的に足りない。
爆裂による噴煙を幾度となくばら撒いて時間を稼いではいるものの、それも時間の問題だろう。
それでもーー
「それでも……」
振り上げた右腕を切り飛ばされながら少女は言う。
「それでも私は……」
残った左腕を切り飛ばされながら少女は言う。
「こんなところで死ぬわけにはいかないのです!」
右足を踏み下ろして発生させた噴煙の中で少女は笑う。
「あはー、間に合ったですねー」
噴煙が晴れたボス部屋で少女は笑う。
優しい微笑から一転、緩い笑顔を少女が……否、《アマリ》が浮かべた瞬間、地の底から響くような怒号が辺りを震わせた。
「何してやがるんだテメェ??」
恐ろしい形相でゴーレムを殴り飛ばすリゼル。
「あーもう! 乙女の柔肌に何てことするんだー!」
怒り心頭に叫びながらアマリに向かって殺到する8本の刃の内、6枚までを叩き落とすレイ。
「どうにか間に合ったな」
落ち着いた声音で呟きつつ、裏拳の一撃を以って残った刃を弾いたリン。
先ほど別れたはずの3人が、それぞれアマリを庇うように現れた。
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