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幻影の旋律
黒の土人形
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いなことに敏捷値一極型のゴーレムの攻撃ではアマリのHPは僅かしか減らず、それもすぐに回復していく。 この辺りは、アマリが大量に習得している《最大HP増加》のModと《戦闘時回復》の効果が十全に発揮されている。
「うー、このままだと終わらないですよー……」
削られたHPは瞬く間に回復していくが、問題はこの状況に終わりが見えないこと。
フォラスの制止がない以上、敵を前にしたアマリに撤退はあり得ない。 かと言って攻撃が擦りさえしないため、《ぶっ殺す》ことができないでいる。
アマリにとって実に嫌な堂々巡り。 かと言ってそれを打開する術を今のアマリは持っていない。
《どんな状況だろうと力押し》 《有り余る筋力値にものを言わせて敵を圧砕する》
それこそがアマリのスタイルであり、アマリがアマリであるための重要なメンタリティーだ。 それはアイデンティティーと言ってもいい。
そんな極端な戦い方でも、普段であればフォラスが必ず隣にいるので苦労したことはない。 アマリが捉えられない敵はフォラスが足止めし、それを仕留めるだけで全てが解決していた。
小細工はいらない。 単純な力で全てを喰らう。
自身の流儀を確認したところで、アマリは先の一幕を思い出してしまう。
フォラスと離れ離れになり、《爆裂》を使ってストレス発散をしている最中に見つけた、《そこら辺をチョロチョロと動く背景の内のどれか》が3人、アマリの意識に侵入した瞬間。 その《どれか》が何かを喚こうとアマリから意識を逸らしたその一瞬、アマリは《心渡り》を使っていた。
完全に無意識だった。 フォラスのことをひたすらに渇望していたからこそ、フォラスの代名詞とも言える《心渡り》を使ってしまっただけなのだが、あれこそ小細工の極みだろう。
《心渡り》
原理はフォラスから説明されているものの、アマリはそれを全く理解していない。 いや、そもそも理解するつもりさえない。 フォラスの隣にいて何度も《心渡り》を見ていたアマリは、それを無意識で使えるまでになっていると、ただそれだけのことだ。 長年連れ添った夫婦の癖が似通ってしまうのと同じこと。
しかし、その時点で《アマリ》のアイデンティティーは崩壊していた。
小細工を使わないと言う誓約を、力押し以外選ばないと言う制限を、アマリは無意識の内に破ってしまっていたのだ。
故に……
「まずは、どうにかしてあれの足を止めないといけませんね」
《仮装》と《現実》の境界があやふやになる。
つい自身の口から零れた、フォラスを前にしてさえ滅多に見せない素の口調に気がつかない。
いつもの緩い笑みでもなければ、狂気と愉悦とに染まった凶相でもない、やれやれとでも言いたげな苦笑。 《アマリ》で
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