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幻影の旋律
黒の土人形
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…本当に人間なのか?」
 「んー、多分?」
 「まあ、フォラスがいればもちっとマシさ」

 リンの疑問に首を傾げるレイと、肩を竦めるリゼル。
 どうやらその程度の無軌道ぶりはアマリを知る者にとって基礎知識のようだ。 リンのように周到な準備を欠かさない者からすれば、頭がおかしいとしか言えない人格だが、リンは既にそれ以上の狂気に当てられていたので、そこまで驚きはない。

 「やれやれ。 こうなると索敵が使えないのは痛いな」
 「それでもここって一本道なんでしょ? 急げば追いつけるよ」
 「そうだな」

 頷いてリンは隠蔽スキルを発動。 それに続くようにリゼルも隠蔽スキルを発動し、習得していないレイを中央に前後で挟むように走り出す。
 リンもリゼルも隠蔽スキルを完全習得している上に、各種Modの影響で通常のMobに気取られることはまずない。 そんな2人が隠蔽スキルを発動すれば、敵に遭遇した場合、真っ先にレイがターゲットにされる。 と言うより、Mobからすればレイ以外にターゲットがいないのだ。

 レイをターゲットにしたMobをリゼルが素通りして、レイと共に挟撃。 後方から敵が迫った場合はリンが仕留める。
 それが元々のパーティーが分断され、3人が合流した際に決定した基本戦略だ。

 (頼むから無事でいろよ……)

 ここにはいない幼馴染の無事を祈り、リンは前を走る2人を追いかける。













 「むー……」

 リンたち3人が後を追ってきていることなど露知らず、アマリは目の前にいる奇形のゴーレムに向かって唇を尖らせた。

 索敵スキルを持たないアマリは索敵のModにある《識別》を持っていない。 そう言う細々とした戦略的なスキルはフォラスの領分であり、圏外に出る時は常にフォラスを伴っているアマリにとって、それを必要に感じることはなかったのだ。 そもそもアマリは戦闘に於いて、《何かをぶっ殺す》ことだけを求めている。 故に敵の名前になんて……これから《ぶっ殺す》相手の名前になんて、些かの興味もなかった。

 安全地帯を1人で出たアマリは、フラフラと洞窟を彷徨っているうちにそのゴーレムを見つけた。
 狭い洞窟内にポッカリと開けた空間に佇むゴーレム。 それこそまさにリンたちの話題に上っていたボスなのだが、そんなこともアマリは気にしなかった。

 殺す。 ただ殺す。
 フォラスと離れた寂しさ。 フロアボス攻略で《その辺をチョロチョロと動いている中のどれか》に触られそうになった苛立ち。 そのプレイヤーがフォラスの友人であると知った時の羞恥。 今の今まで何も殺せていない飢え。
 それらのストレスを発散させるに丁度いい獲物を見つけたアマリは、いつものように『あっはぁ』と笑ってその
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