暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン -旋律の奏者- コラボとか短編とかそんな感じのノリで
幻影の旋律
狂気の一端
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
  《惨殺天使》
 そんな物騒な二つ名を持つプレイヤーを、少年は以前から知っていた。
 直接話したことはないものの、何しろ彼女は有名人だ。 色々な情報を集めている少年でなくとも、その噂を知っているプレイヤーは多いだろう。

 曰く《狂人》
 攻略に重きを置いているわけではなく、ただ敵を殺すことに執着する殺戮狂。 その小柄なアバターに不釣り合いな、恐ろしく巨大かつ鈍重な両手斧を振るい、殺戮の限りを尽くす桜色の悪魔。 彼女のパートナーである、かつては《戦慄の葬者》と呼ばれた少年の隣で笑い、ボスを圧殺する姿を何度も見ているが、少年が慣れることはなかった。

 そして今、少年の目の前に彼女はいる。

 人間におおよそ不可能な動きと角度で首を傾け、狂気の内包された瞳を少年とその隣にいる2人の少女に向けている。

 「あっはぁ!」

 それは身の毛もよだつような笑声。
 愉悦と狂気とに歪んだソレを向けられた少年は、恐怖に竦む自身を心中で叱咤し、友人であり頼れる仲間に叫んだ。

 「レイ、リゼル! お前たちはーーーーっ!」

 が、言葉が最後まで続くことはなかった。

 目を離したわけではない。 油断なんてとんでもない。 生き残るために本能に従い、ソレから注意を逸らしはしなかった。 だと言うのに……

 「なっ??」

 ()()()()()()()()()()()()()()

 重ねて言おう。
 少年はソレから目を離していない。 油断もしていなかったし、注意を逸らしてはいなかった。
 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 そして、その一瞬はソレを前にした時、致命的な一瞬だったのだ。

 瞬間、殆ど反射と言っていいほど躊躇いもなく、少年はコートの裾に隠してある鞘から剣を抜き、ソレに斬りかかる。
 が、そんな一撃を身を沈ませて回避したソレは、途端にその場から飛び退いた。 直後にソレがいた場所を通過する長大な槍。
 見るまでもなくそれは少年の仲間である槍使いの少女のものだ。

 内心で感謝をしつつ、けれど今度こそ少年はソレから意識を外さない。
 何が起こったのかはまるで見当もつかないが、ソレが危険であることは今の一合だけで十分にわかった。

 一方のソレは、狂気と愉悦とに彩られた表情のまま、自身を後退に追い込んだ槍を見て、それから槍使いの少女を見る。 それからどう言うわけか、コテンと首が傾げられた。


[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ