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幻影の旋律
狂気の一端
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「誰かと思えばレイ姉ちゃんじゃないですかー。 そんなところでどうしたですか?」
途端にソレの身から溢れ出していた強烈な、狂気としか言えないような何かが霧散する。 表情も少年が知っている、緩い笑顔に変わった。
それはもう、人格が変わったかのような豹変。 あるいは変貌。
事態に追いつけず、それでも警戒を解かない少年は、そこで槍使いの少女が槍を引いて臨戦態勢を解く気配を感じた。
「どうしたはこっちのセリフさね。 あんたこそここで何をしているんだい?」
ソレに対応したのは、もう1人の仲間だ。
今までの一幕が嘘だったとでも言うほど、自然な苦笑が声に混じる。
「フォラスくんといきなり離れちゃったので憂さ晴らし中だったのです。 あはー、勢いでぶっ殺すところでしたー。 ごめんなさいですよー」
ソレは緩く笑って頭を下げた。
「…………」
思わず無言になってしまうのは、ソレ……アマリがあまりにも普通に謝ったからだ。
普通に、まるで深刻そうな様子もなく、あれがちょっとしたお茶目なミスだったかのような自然さで。
別に攻撃されたわけではない。
だがあの時、少年は自身の死を予感した。 それだけ濃密な狂気を撒き散らし、しかも自分自身で『ぶっ殺すところでした』と申告しておいて、だと言うのにその自然さに少年は恐怖する。
例えばあの時、槍使いの少女の援護がなければ、リンは普通に殺されていただろう。
普通に、なんの気負いもなく、それこそモンスターを相手にするような自然さで殺されていた。
(コレは一体なんだ?)
少年の心中で湧き上がった疑問は、ソレを見つけた時に抱いたそれとも、ソレが行った不可解な爆発を見た時に抱いたそれとも違う。
ソレが一体なんなのか?
人間とは最早呼べないほどの狂気にリンは完全に飲まれていた。
しかし、少年の友人はそんなこともないらしく、至極普段通りの声音でソレに声をかけた。
「ボクたちだったから良かったけど、あんなこと他の人にやったら大問題だよ!」
「うー、ごめんなさいです」
槍使いの少女がいつもの大声で言うと、ソレはシュンと俯いた。
俺たちが相手でも大問題だ! と声を荒らげたい衝動に駆られる少年だが、恐怖によって普段のような突っ込みができない。
「迷惑かけちまったね、リン。 アタイからも謝るよ」
そんな少年……リンの心中を察したのか、もう1人の少女が呆れと申し訳なさが混在した苦笑いを浮かべていた。
「迷惑で済む話しなのか?」
「リンの気持ちはわかるけど、まあ抑えてやってくれ。 あの子、普通にしてる分にはいい子だからさ」
「……リゼルがそこま
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