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幻影の旋律
窮地との再会
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一瞬の逡巡は僕を信用できるか測った故だろう。
それでもこの状況下では指示に従う以外選択肢はないし、微妙に離れた位置にいる黒のお姉さんがこちらに来てから白のお姉さんを抱えて離脱するほどの余裕がないように見えるはずだ。 少なくとも黒のお姉さんから見れば、だけど。
僕が指差した通路に片手剣を握って突っ込んでくれた黒のお姉さんの思い切りの良さに感謝しつつ、僕は手早く白のお姉さんを背負う。
「わーお」
状況にそぐわない気の抜けた声が思わず出るけどそれも無視して、やっぱり僕も迷わずに撤退を開始する。
チラリと後ろを確認すると、狙い通りに麻痺して動けない狼男と目が合った。
そこにあるのは、モンスターにしておくには惜しいくらいの殺意と怒り、だろうか。 妙に人間臭い眼光に苦笑してから前を向く。
逼迫した状況なのに、背中に押し付けられたふたつの巨大な膨らみに意識がいってしまうのは、年頃の男の子としては仕方がないだろう。
こんなことでドギマギしていることをアマリに知られたら、僕はきっと潰される。
そんな嫌な未来を予想しつつ、僕はとにかく走った。
幸い、撤退中にモンスターと出くわすことはなかった。
そんなこんなで僕たちが逃げ込んだのは、僕が初めに転移してきた場所。 ここが安全地帯であることは予め確認済みだったので、とりあえずの避難場所にしたわけだ。
「ここまでくれば安心だね」
誰に向けるでもなく呟いた言葉と共に、背負ってきた白のお姉さんを地面に下ろす。
直後、先に安全地帯に入っていた黒のお姉さんがその隣に膝をついた。
「大丈夫ですか?」
非常に落ち着いた声音での問いかけだけど、それは無理して落ち着かせているのが明白で、もしもここに僕がいなかったら大声で心配していただろうことが容易に想像できる。
一方の白のお姉さんはそんな声に反応を返さず、ただ切れ切れの息を漏らすだけ。
通常の麻痺であれば、たとえその最中にあっても囁き声程度なら発することができるし、緩慢にはなるけど動くことは可能だ。
だと言うのになんの反応も返さないと言うことは、どうやら予想していた通り《レベル9》の麻痺毒を受けたのだろう。
レベル9麻痺毒。
これを受けると身体が全く動かなくなり、声を発することもできなくなる、現時点で確認されている限りでは最強最悪の状態異常。
耐毒スキルを持たないプレイヤーが自然治癒にかかる時間はおおよそ20分。 しかも、店売りの解毒ポーションはおろか浄化結晶を使ってでさえ治療ができない。
その時間を短縮するためには、調合スキルをコンプリートしたプレイヤーのみが製作可能なレベル9麻痺毒用ポーションが必須
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