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幻影の旋律
窮地との再会
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認せず、僕はバックステップで距離を取りつつ、呆然としていたお姉さんたちに向かって指示を飛ばした。

 「お姉さんはそこの通路から退避! そっちのお姉さんも早く!」
 「駄目です! ヒヨリさんは麻痺していて!」
 「だったら僕が連れてくからーーーーっ!」

 今度は狼男が僕に向かって突進してくる。
 さすがはレベル89のモンスター。 その凄まじい速度の突進に必然、指示が止まる。

 狼男の右手が瞬く。 状況から推察するに、あの爪が白のお姉さんを麻痺させた原因だろう。 つまり、喰らうわけにはいかない。
 殆ど反射的に上体を反らすと、『キュボッ』と言う音と共に先ほどまで僕の頭があった場所が空気ごと抉られた。 直後、反撃する隙を僕に与えないように、今度は左腕がブレる。
 攻略組トップクラス剣士のそれに匹敵するほどの正確さと速度で繰り出される3連撃。

 1撃目。
 風を切る音さえ置き去りにする速度で振るわれる、首を狙った爪の横薙ぎを最低限のバックステップで回避。
 続く2撃目。
 横薙ぎを振り抜いた勢いが不自然に止まり、そこから繰り出される手刀による再度の横薙ぎは身体を沈ませて回避。 頭上を通過する暴風に肝を冷やしつつ、ニヤリと笑う狼男と目が合った。
 締めの3撃目。
 いつの間にか引き戻されていた左腕の五指を全て揃えた必殺の貫手。 それを頭を振って回避すると同時に、僕は狼男との間合いを完全にゼロにする。

 「悪いね、ジルさん」
 「ガッ……」

 と、同時にガントレットで覆われた左肘を狼男、固有名《ジル・ガルニエ》の右脇腹に叩き込んだ。
 漏れ出した苦悶の声は、ようやく捉えた突破口だ。

 「もっと速くてえげつないくらい正確な攻撃を知ってるからさ。 だから当たらないよ」

 そして、その突破口を逃すほど甘くはないし馬鹿でもない。

 右手に持ち替えた短剣を狼男の左肩に突き込んでから跳躍。 狼男の頭上へと飛び上がった僕は、ポーチからとある液体の入った小瓶をばら撒き、何もない空間を足場にして更に跳ぶ。

 「それに、速さは僕の方が上みたいだしね」

 クスリと笑うと同時に、空中にいるままポーチから今度は鋭く長いピックを放る。 投剣スキルを持っていない投擲ではあるけど、何度も練習しただけあって、ピックは狙い違わず小瓶を撃ち抜き、そして狼男の身に突き立った。

 結果を確認する頃にはもう一度何もない空間を足場にして、今度は大きく飛び退くと、そのまま脇目も振らずにダッシュ。
 白のお姉さんの隣で急制動をかけてから、再び黒のお姉さんに向かって叫んだ。

 「とりあえず撤退! お姉さんが先行して、モンスターが出てくるようなら露払い! このお姉さんは僕が連れてくから!」
 「っ……お願いします!」

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