第百一話 伯爵の憂鬱な日
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托生だ、そこで相談に来たわけだよ」
「なにか策はあるのか?」
そう情けない顔を御するな、藁をも掴む状態とはこういう事を言うのかもしれないな。
「愚弟の事は、未だ俺だけしか知らん」
本当は信頼できる腹心が知っているが、そこまでは教えんよ。
「と言うことは密かに始末でもするのか?」
ほう、伯爵だけの事はあるが未だ未だだな。
「いや、それは不味い、しかも卿の弟であろう」
「しかし、このまま行けば家名断絶は確実だ」
「急死、病死、事故死などすれば、エリザベートが騒ぎだすだろうし、典礼省も五月蠅いはずだ」
「ハルテンベルク伯爵、卿がエリザベート殿を宥めていただき、典礼省は付け届けさえすれば黙らせられるのではないか?」
「無理だな、エリザベートは激しい娘だ、後追うと言いかねない、さらに典礼省はもっと駄目だ。前職のアイゼンフート伯爵なら付け届けも効いたであろうが、今のマリーンドルフ伯爵は清廉潔白で有名だ、それこそ腹を探られてしまう」
「それでは、そのまま放置するつもりか」
「それはせんさ、だからこそ卿に協力を求めてきたのだから」
「私の協力と言っても出来る限りのことはするが」
やっと本題に行けるな、此しか策がないのだから仕方が無いが、許せよエリザベート。
「愚弟は、軍において大佐待遇の軍属だな」
「確かにそうだが、経理関係だぞ」
「そこでだ、叛徒共との最前戦であるカプチュランカへ派遣させ、そこで戦死させるのだ」
「うむー・・・・・・・・・・なるほど、名誉の戦死か」
「そうだ、有無を言わさずに送り出すのだ」
「しかしだ、生きて帰ってきたらどうするのだ?」
「いや、その基地には定期便の様に敵襲があるそうだ、そこで迎撃戦に参加させ戦死させる」
「しかし、経理では参戦しないのでは?」
「そこは、監視に部下を1人つけて、そいつに手引きさせるさ」
いざと成れば、マチアスを殺すようにすれば良いだけだからな。
「大丈夫なんだろうな?」
「任せておけ、口の堅さは折り紙付きだ」
「さすれば、我が家も卿も、卿の妹も傷が付かないと言う訳か」
「そう言う事だ、愚弟は名誉の戦死で少将閣下だ、名誉であり恥にはならんだろ」
「確かに」
「そこで、卿と私で軍に圧力をかけて愚弟の人事異動を認めさせるのだよ」
「判った、協力しよう」
これで、私の名誉も我が家もエリザベートも助かる、マチウスよ卿が悪いのだ!
「では失礼する」
「ああ、では決行の時に」
「うむ」
帝国暦481年5月2日
■オーディン 憲兵隊総監部
憲兵隊総監室に数名の人間が集まり密談をしている。普段であれば居眠りをしながらよだれを垂らしている憲兵総監グリンメルスハウゼン大将が鋭い眼光で集まった者達に対峙してい
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