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歌集「春雪花」
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 日も絶へて

  虫そ呼びける

   寝待月

 月はきたれど

     君の影なき



 とっくに日は落ちていると言うのに…月はその顔を見せてはくれない。

 外では秋虫が盛大に鳴いているが…それは月を呼んでいるのだろうか…?

 寝て待つ程に遅い月影…そうだとしても、月はその姿を見せてくれる…。

 だが…ここに彼の姿は見当たらない…。

 私も泣けば…来てくれるだろうか…?

 有り得ないことだ…。


 たとえ天地が逆転しようと、彼にとって私は…道端の石と同じなのだから…。



 来ぬ人を

  想いて手折る

   長月の

 宵待草の

   香ぞ懐かしき



 どれだけ待っていようと、彼は私の所へ来るはずもなく…寂しさに家を出ようが、心を紛らすものもない…。

 故郷を偲ぶように田へと足を向ければ、道との境に宵待草…。

 故郷へいた時も、こうして彼を想い…夜道を歩いた…。

 ふと宵待草を折ると、その花から懐かしい匂いがした…。


 彼を愛している…どこへいても、それは変わらぬことだと…独り、苦笑した…。



 
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