暁 〜小説投稿サイト〜
ゆきおがあたいにチューしてくれない
いつか……
[5/5]

[8]前話 [9] 最初
めて私は、ゆきおの手をギュッと握った。

「?」
「ニシシ」

 顔を上げたゆきおは、ちょっと不思議そうに首を傾げた。

「いいってことよ! あたいは全然気にしてないし!!」
「そっか……よかった。安心した」
「強いて言えば、チューしたくなるゆきおのおでこが悪いな!」
「ぇえ!?」

 うん。確かに、気を抜くとチューしたくなるおでこのゆきおだけど……ホントは今も、そのおでこにチューしたいけれど。

「ニシシ……」
「もうっ……へへ……」

 でも、まぁいいや。比叡さんが言うにはとても簡単らしいけど。今は別にいいや。

 だって、二人で海を眺めながら、ベンチに座って話をするだけで、こんなに楽しいから。

「なーゆきおー? ちょっと寒い」
「……実を言うと、ぼくもちょっと寒い」
「んじゃぴったりくっつくか?」
「そだね」

 そして、こうやって肩を並べてくっついてるだけで、こんなにもうれしくて、あったかいから。

「……涼風」
「んー?」

 私の左手に絡まっている、ゆきおの右手に、ほんの少しだけ力と熱が篭った気がした。顔を見る。ほっぺたが、ほんのり赤くなっている。でも。

「いつか……」
「?」

 真剣な眼差しでまっすぐに海を眺めながら、小さな声で、ポソポソと何かをつぶやくゆきおの唇は、とっても綺麗な薄桃色だった。

 そんな、とても綺麗なゆきおの唇を見ながら、私は思う。

「いつか……」
「うん……いつか」

 いつか……その唇、あたいが奪ってやるぜ。ゆきお……っ!

おわり。

[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ