いつか……
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めて私は、ゆきおの手をギュッと握った。
「?」
「ニシシ」
顔を上げたゆきおは、ちょっと不思議そうに首を傾げた。
「いいってことよ! あたいは全然気にしてないし!!」
「そっか……よかった。安心した」
「強いて言えば、チューしたくなるゆきおのおでこが悪いな!」
「ぇえ!?」
うん。確かに、気を抜くとチューしたくなるおでこのゆきおだけど……ホントは今も、そのおでこにチューしたいけれど。
「ニシシ……」
「もうっ……へへ……」
でも、まぁいいや。比叡さんが言うにはとても簡単らしいけど。今は別にいいや。
だって、二人で海を眺めながら、ベンチに座って話をするだけで、こんなに楽しいから。
「なーゆきおー? ちょっと寒い」
「……実を言うと、ぼくもちょっと寒い」
「んじゃぴったりくっつくか?」
「そだね」
そして、こうやって肩を並べてくっついてるだけで、こんなにもうれしくて、あったかいから。
「……涼風」
「んー?」
私の左手に絡まっている、ゆきおの右手に、ほんの少しだけ力と熱が篭った気がした。顔を見る。ほっぺたが、ほんのり赤くなっている。でも。
「いつか……」
「?」
真剣な眼差しでまっすぐに海を眺めながら、小さな声で、ポソポソと何かをつぶやくゆきおの唇は、とっても綺麗な薄桃色だった。
そんな、とても綺麗なゆきおの唇を見ながら、私は思う。
「いつか……」
「うん……いつか」
いつか……その唇、あたいが奪ってやるぜ。ゆきお……っ!
おわり。
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