第6部 贖罪の炎宝石
第5章 人外の力
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学院を襲ったことのあるフーケが、作戦に対する不満を述べた。
「なに、教師のほとんどは戦に参戦するだろう。男子生徒もな。残るのは女生徒ばかりだろう…。それに、そんなものは大したことではない。われらにとっての脅威は別にいるだろう?」
ワルドは、徐々に声を低くして言い放った。
フーケの頭の中にある男が思い浮かぶ。
真っ白ないで立ちに剣を携えた、化け物を。
「それで、この男の出番というわけだ」
ワルドは、先ほどとは打って変わって明るい印象で口を開いた。
「なあ?メンヌヴィル?」
メンヌヴィルはニタッと薄気味悪く口角をあげた。
「はっ!この男にあのウルキオラをやれるってのかい?」
フーケは苛立ちを隠せない。
「お前も感じただろう?メンヌヴィルの底知れぬ奇異な力を」
「そりゃあね、到底人間のそれとは思えないものだよ」
話を聞いていたメンヌヴィルは薄気味悪く上げた口角を大きく開いた。
そして、高らかに笑った。
ネジが外れたように、笑った。
すると、先ほどよりもさらに不快な雰囲気が、力の波動がフーケの身体を襲った。
全身から冷や汗がにじみ出る。
『こいつはやばい』と。
『お前の、いや、人類の敵だ』と。
震える身体を何とか抑え込みながら、ワルドへと視線を向ける。
ワルドも、その不快なものに恐怖を抱きながらも、表情はどことなく希望がにじんでいた。
「彼は、人間だ…元がつくがな」
「どういうことだい?」
フーケは心底理解できないといった感じであった。
ワルドは急に立ち上がると、両手を大きく広げ、目を見開いた。
「手にしたのだよ!メンヌヴィルは!!強大な力を!!!人間の枠を超えた大いなる領域へと足を踏み入れたのだ!」
ワルドは興奮を隠すことなく言葉をつづけた。
「あのウルキオラよりをも斃す神の力を!」
フーケは戦慄した。
ワルドは正気の沙汰ではない。
だが、話は的を射ている。
人間の力ではないのであれば、自分がこのように恐怖を覚えることも不思議ではないと思ったからだ。
逆に、人間の行き着く力の頂だ、と言われたほうがフーケにとっては畏怖を覚える。
ワルドは、ククッとのどを鳴らして笑うと、小さく告げた。
「メンヌヴィルが手にした力は『虚』という力だそうだ……。この力であれば、あのウルキオラを叩き潰せる」
メンヌヴィヌはさらに大きく笑い声をあげた。
気が狂れたように、長く笑い続けた。
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