第6部 贖罪の炎宝石
第5章 人外の力
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だから優遇される…と言う訳ではなく、たとえ貴族でも士官候補生のような低い階級だと、平民の平海尉などの上位に位置する階級の輩には威張れないのである。
ウルキオラやルイズと関わりのあるギーシュとマリコルヌも募兵官に王軍への申し込みを行っていた。
ギーシュは王軍所属のド・ヴェヌイーユ独立大隊の中隊長、マリコルヌは空軍の士官候補生として配属された。
二人は初陣ということもあり、たいそう張り切っていたが、予想を大きく下回る配属先であった。
なんと、ギーシュの属するド・ヴェヌイーユ独立大隊は、数だけそろえた戦闘の『せ』の字も分からぬ貴族の子息子女と平民の集まり。
しかも、ギーシュが中隊長を任命されたのはギーシュの実力が買われたわけではなく、ただ単に前の中隊長が戦争を恐れ逃げただけに過ぎなかった。
まさしく埋め合わせである。
そして、マリコルヌの属する空軍は平民も貴族も関係ない、封建制の軍組織。
戦争が始まってもいないのに、既に地獄を見ている二人なのであった。
ダングルテール(アングル地方)。
かつて何百年も前、アルビオンから移住してきた人々が開いたとされる、その海に面した北西部の村々は、常に歴代トリステイン王にとって悩みの種であった。
独立独歩の気風があり、何かというと中央政府に反発するからであった。
百年ほど前、実践教義運動が宗教国家ロマリアの一司教から湧き起こった時も、進取の気性にとんだこの地方の民は、いちはやく取り入れた。
そのために時の王からは恐れられたが……、アルビオン人独特の飄々とした気風も色濃く残し、飲むところはきっちり飲んだため、激しく弾圧されることはなかった。
つまるところ、アングル地方の民は要領よくやっていたのである。
二十年前、自治政府をトリステイン政府に認めさせ、新教徒の寺院を開いた。
それがためにロマリアの宗教庁ににらまれ、圧力を受けたトリステインの軍により鎮定された、と当時の文献には残っている。
二十年前のその日、アニエスはまだ三歳であった。
残る記憶は断片的で、鮮烈であった。
三歳のアニエスは、浜辺で貝殻を拾っていた。
綺麗に削られた貝殻よりも、美しいものをアニエスは見つけた。
それは……、波打ち際に打ちあげられた若い女性の指に光る……、炎のように美しい大粒のルビーの指輪であった。
怯えながら、三歳のアニエスはそのルビーの指輪に触れた。
瞬間、その若い女性は目を開いた。
そして、震える声で、アニエスに問いかけた。
「……ここは?」
「ダ、ダングルテール」
とアニエスが答えると、若い女性は満足そうに頷いた。
アニエスは大人たちに漂着者がいることを知らせに走った。
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