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とある3年4組の卑怯者
20 赤子(ながさわたろう)
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よ。永沢さん、是非上がってください」
「城ヶ崎さん、ありがとうございます」
 城ヶ崎の母は永沢の母と太郎をピアノのある部屋に連れて行った。
「それじゃあ、弾かせていただきます」
 そう言って城ヶ崎はピアノを弾き始めた。一瞬永沢の嫌味が気になった。しかし、それでも思い切ってピアノを弾き続けた。そして、太郎が泣き止み、笑顔になった。一曲弾き終えたところ、永沢の母から拍手を貰った。
「ありがとう、姫子ちゃん。太郎もすっかり喜んじゃって。すっかりピアノが好きになっちゃったのね」
「ありがとうございます。そうだ、太郎君、こっちへ来てピアノで遊ぼう」
「あー、あー」
 城ヶ崎は太郎を自分の膝元に乗せ、鍵盤に触らせた。城ヶ崎は太郎との一時を楽しむ中、心の中で兄弟の違いを感じていた。
(太郎君はまだ小さいってのもあるけど永沢よりも愛嬌があるな・・・)
「う、うう、うわあん・・・」
 やがて、太郎が泣き出した。
「太郎君!?」
「きっとお腹が空いたんだね」
 城ヶ崎は太郎を永沢の母に渡した。永沢の母は瓶入りの粉ミルクを取り出した。太郎は飲み干してゲップをすると、しばらくして寝てしまった。
「そういえば私たちもお昼ご飯の時間ね。永沢さん、ご一緒にお食べになってはどうですか?」
 城ヶ崎の母が提案した。
「いえ、そんな・・・」
「まあ、ご遠慮なさらずに」
「ありがとうございます、城ヶ崎さん」
 こうして永沢の母は城ヶ崎家で食事を共にした。
 食事中、城ヶ崎の母と永沢の母は楽しく話していた。城ヶ崎は永沢の母に聞きたいことがあった。
「あ、あの、おばさん・・・」
「どうしたの、姫子ちゃん?」
「私って贅沢ばかりしているのでしょうか?欲しい物があるとなんでも買ってもらったりとか、ピアノを弾いたりとか・・・」
「いいじゃないかい、そんなの。私もそんなことをうちの子にしてやりたいんだけどね、火事にあったせいで、簡単にできないんだ。もし欲しい物があったらお父さんやお母さんに言っていいんだよ。でも買えるものと買えないものもあることを忘れちゃだめだよ」
「おばさん・・・」
「それにピアノは悪いことじゃないよ。趣味でも楽しめばいいじゃないか。お兄ちゃんだって、藤木君とプラモデルを造りの競争をしているんだよ。それでどっちのできがいいか比べているんだから」
「はい・・・、でも私、永沢君やおばさんのような苦労をしたことがないから、文句を言われるんじゃないかと思うんです・・・」
「そんなことないと思うよ。誰にだって苦労することはあるよ。姫子ちゃんもピアノを上手く弾けるように努力してきたんじゃないの?うちの火事とは比べものにならないだろうけどそれでいくらか苦労したんでしよ?」
「は、はい・・・」
 城ヶ崎は永沢の母からこのようなことを言われたこと
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