暁 〜小説投稿サイト〜
ゆきおがあたいにチューしてくれない
ゆきお→涼風
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
「ほ、ほら! お日様も暖かいし、木陰のところに顔を持ってきとけば、眩しくないだろ?」
「でも……」

 うろたえるゆきおを尻目に、私は先に芝生の上にコロンと寝転んだ。途端に胸いっぱいに広がる、草の香りが心地いい。大の字に伸ばした身体も、お日様の光があたって、とても気持ちいい。

「は、はしたないよ涼風……」
「てやんでい! これが気持ちいいんだっ!」

 未だにうろたえてもじもじするゆきおを、私はゆきおの足元から叱咤する。ゆきおを足元から見上げた経験なんてないから、この光景はすごく新鮮だ。なんだかすごく、ゆきおの背が高くなったように見える……。

「ゆきおも寝転べよっ!」
「う、うう……」

 私にそう言われても、相変わらずゆきおは真っ赤っかな顔で、私から目をそらし、もじもじしながらまごついている。

「ほらゆきおっ!」
「へ?」
「こっちこいって!!」

 埒が明かない……私は上体を起こし、ゆきおの右手を掴んで、強引に引っ張った。

「よいっしょ!」
「ふぁ……!」

 その結果……私に引っ張られてバランスを崩したゆきおは……

「あっ!?」
「ゆきお!?」

 私の頭のすぐそばに両手をついて……

「「……!?」」

 私に覆いかぶさってきた。

「……う」
「……ゆ、ゆき……」

 こ、これは……この体勢は……。

「す、涼風……」
「ゆきお……」

 私の顔のすぐそばに、ほっぺたを赤く染めた、ゆきおの顔がある。

「……」
「あ、あの……ごめん……」

 ゆきおの視線が下がった。ゆきおは今、私の目じゃなくて……唇見てる……

「す、涼風……」
「な、……なに……?」

 私の顔が、熱くなってきた……。胸が大太鼓をドンドン鳴らしてる……心の中で、鼓笛隊みたいな格好をした小さな私たちが、スネアドラムをダララララララって鳴らしたり、『てやんでー!』とか『こんちきしょー!!』とか『いよっ! 待ってましたー!!』とか、そらぁもう大騒ぎしてる。

「……」
「……」

 ゆきおが、とっても真っ直ぐな眼差しで、再び私の目をキッと見つめた。ダメだ……すんごくカッコイイ……ほっぺた赤いけど……でも見てるだけですごくドキドキする……

「す、すずかぜっ」
「ひ、ひゃいっ」

 地面に付いているゆきおの両腕が、フルフルと震えてる。……あ、あたいの唇、カサカサかも……しまった……やっぱりリップクリームだけでもつけとけば……

 少しずつ少しずつ、ゆきおの顔が近づいてきた。心の中の涼風鼓笛隊が一斉に大騒ぎをやめ、私とゆきおを固唾を呑んで見守りはじめた。

「……」
「……」

 突然、身体がふわっと浮いた気がした。

「ふぁ……」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ