ゆきお→涼風
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「ほ、ほら! お日様も暖かいし、木陰のところに顔を持ってきとけば、眩しくないだろ?」
「でも……」
うろたえるゆきおを尻目に、私は先に芝生の上にコロンと寝転んだ。途端に胸いっぱいに広がる、草の香りが心地いい。大の字に伸ばした身体も、お日様の光があたって、とても気持ちいい。
「は、はしたないよ涼風……」
「てやんでい! これが気持ちいいんだっ!」
未だにうろたえてもじもじするゆきおを、私はゆきおの足元から叱咤する。ゆきおを足元から見上げた経験なんてないから、この光景はすごく新鮮だ。なんだかすごく、ゆきおの背が高くなったように見える……。
「ゆきおも寝転べよっ!」
「う、うう……」
私にそう言われても、相変わらずゆきおは真っ赤っかな顔で、私から目をそらし、もじもじしながらまごついている。
「ほらゆきおっ!」
「へ?」
「こっちこいって!!」
埒が明かない……私は上体を起こし、ゆきおの右手を掴んで、強引に引っ張った。
「よいっしょ!」
「ふぁ……!」
その結果……私に引っ張られてバランスを崩したゆきおは……
「あっ!?」
「ゆきお!?」
私の頭のすぐそばに両手をついて……
「「……!?」」
私に覆いかぶさってきた。
「……う」
「……ゆ、ゆき……」
こ、これは……この体勢は……。
「す、涼風……」
「ゆきお……」
私の顔のすぐそばに、ほっぺたを赤く染めた、ゆきおの顔がある。
「……」
「あ、あの……ごめん……」
ゆきおの視線が下がった。ゆきおは今、私の目じゃなくて……唇見てる……
「す、涼風……」
「な、……なに……?」
私の顔が、熱くなってきた……。胸が大太鼓をドンドン鳴らしてる……心の中で、鼓笛隊みたいな格好をした小さな私たちが、スネアドラムをダララララララって鳴らしたり、『てやんでー!』とか『こんちきしょー!!』とか『いよっ! 待ってましたー!!』とか、そらぁもう大騒ぎしてる。
「……」
「……」
ゆきおが、とっても真っ直ぐな眼差しで、再び私の目をキッと見つめた。ダメだ……すんごくカッコイイ……ほっぺた赤いけど……でも見てるだけですごくドキドキする……
「す、すずかぜっ」
「ひ、ひゃいっ」
地面に付いているゆきおの両腕が、フルフルと震えてる。……あ、あたいの唇、カサカサかも……しまった……やっぱりリップクリームだけでもつけとけば……
少しずつ少しずつ、ゆきおの顔が近づいてきた。心の中の涼風鼓笛隊が一斉に大騒ぎをやめ、私とゆきおを固唾を呑んで見守りはじめた。
「……」
「……」
突然、身体がふわっと浮いた気がした。
「ふぁ……」
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