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シベリアンハイキング
カラケレイト
吠えるに口はいらず

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二匹の内、群れの首領と思われる大型の狼がまず吠えた。威嚇している。しかし、顔無しは動かず、じっとしている。そうして暫く相手の罵声とも思われる咆哮を一身に受けていたその時である。突如、辺り一面に轟音を伴った衝撃波の様な空気の波が起きた。それは間違いなく顔無しから発生したものであった。この顔無しの狼から空気の塊の様な衝撃波が放射状に発せられたのだ。ユスフがこの顔無き狼の鳴き声を、初めて聞いたのはこの時であった。最初斜面を埋め尽くし、鉄壁の様に見えた狼の大群は、この一声で脆くも崩れる。大半は戦意を失い、中には逃げ出すものも出始めた。首領の大型の狼も、ここに至って降参を認め、向きを変えて山の方へ帰り出す。いよいよ、自分は得体の知れぬ物に気に入られた様だ。ユスフはそう考えながら、先に歩き始めた異形の後を追いかけた。 気付けば道は峠を超えて、下りとなり、シベリアの冷気がいよいよユスフを覆うのであった。
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