第21話 友と語る、セピア色の懐かしき出会い話
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・・・喧嘩で負ける・・・位なら・・・腕の一本や足の一本・・・・・・どうって事・・・ねぇ!!」
負けたくない。ただその思い一心で番は大きく振りかぶった。
そして、今の自分に込められる全ての力を右拳に注ぎ込み、力いっぱい振りぬいた。
辺り周辺に乾いた音が響き渡る。
番の全霊の拳は、少年の両の手の中で納まり、それ以降微動だにせずにその動きを止めてしまった。
「強い拳だね・・・だけど、それだけに今の君の拳は弱い」
「よ、弱い・・・だと?」
「闇雲に人を殴り倒す事が強くなる方法と思っているのなら、それは間違いだよ。本当に強くなる方法じゃない」
少年の諭すような言葉に、番は反論する事も出来ず、膝が折れ、地面に項垂れてしまった。
「だったら・・・・・・だったら、どうすりゃ良いんだよ!! お前に、お前にそれが分かんのかよ! 俺は、俺はどうすれば強くなれるんだ!? どうすれば―――」
番の両眼から涙が流れ落ちた。強くなりたい。その一心が彼の目を曇らせ、この様な非道な行為に走らせてしまった。
そのせいで、今まで番は多くの人を苦しませ、そして悲しませ続けてきた。殴り倒した人たちは勿論のこと、弟や母、そして恩人にまでも―――
「人を殴る事だけが強くなる道じゃない。人を守る事もまた、強さを語る方法なんじゃないのかい?」
「守る?」
「君は今まで悪戯に殴る事だけをしてきた。今度は、その拳を広げてみたらどうだい? ただ人を殴るだけじゃない、人を助ける事だって、君の手なら出来る筈だろう?」
「急にそんな事言われても・・・良く分かんねぇよ」
「難しく考える必要はないさ。ただ、助けを求める声に君が答えれば良い。それだけの事さ」
少年の言葉に番は大きく胸を打たれる思いがした。
拳で殴るのではなく、守る為に拳を広げる。
広げた手で助けを求める人を助け、救う。
それこそが強さの証となる。そう、少年は言いたかったのかも知れない。
「良く分かんねぇけどよ。何となく分かった気がする」
「そりゃ良かった」
「だけどなぁ、お前との喧嘩はまだ決着ついちゃいねぇからな!」
「まだやるのかい?」
「いいや、今日はもうやらねぇ」
少年を前に、番は拳を収めた。これ以上戦っても投げ飛ばされるのは目に見えている。
悔しいが、今の自分では彼には勝てない事は認めざるを得ない。
だが、このまま負けっぱなしでいるのは我慢が出来なかった。
「また今度だ。今度、俺が今よりももっともっと強くなって、最強の男になった時だ。そん時ぁ、てめぇにいの一番に喧嘩を売ってやる! んでもって、今度は俺が勝つ!」
「気の長い話だね。まぁ、それまで覚えてたら覚えておくよ」
やれやれと言った感じに少年は承諾した。まぁ、しな
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