第21話 友と語る、セピア色の懐かしき出会い話
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と言うのに連絡の一つも寄越さない父に対して、番の中でとある感情が芽生え始めていた。
倒れた母も、幼い弟も守れない、不甲斐ない自分。そして、そんな家族を捨てて行った父への底知れぬまでの『憎しみ』だった―――
***
それからの番は、荒れに荒れ狂っていた。目に付いた奴は誰であろうと殴りつけ、喧嘩を売っては買い、買っては売りの行為を繰り返し、相手を徹底的に叩きのめしてしまう最悪の喧嘩ばかりを繰り返し続けていた。
番が中学生になる頃には上級生は勿論、高校生すらも殴りかかり、挙句の果てには全く関係ない一般人にも喧嘩を売るなどの愚行を繰り返していた。
「番、いい加減にしろ!」
「・・・・・・」
警察署内の取調室の中で、しょっ引かれた番と、父母の友人である駒木警部の二人が居た。
「今月に入ってもう15件目だぞ。お前が起こした殺人未遂の暴行沙汰は!」
「あいつらが喧嘩を売って来たから買ってやっただけの事だ。俺に悪気はねぇよ」
「じゃぁ何か? お前はただ歩いていた一般市民に対してもそんな事を言って喧嘩を売って、重症を負わせるのか? それがお前の言う喧嘩なのか?」
「・・・分かんねぇよ。そんなの―――」
駒木の問いに、番は静かに答えた。
番が喧嘩を売る相手は実に様々だった。とにかく目に付いた奴には片っ端から殴り掛かり、完全に戦意を亡くすまで殴り続けると言った行為を繰り返し続けていたのだ。
今回、番を逮捕するにしたって、大勢の警察官が番の暴力に巻き込まれ大怪我を負ってしまった。
其処で、駒木に召集が掛かり、こうしてしょっぴかれたのである。
「良いか、番。もうこれ以上こんな喧嘩をするんじゃない。お前のやってるのは喧嘩じゃない。ただの暴力だ! そんなんじゃ、折角退院出来ためぐみさんだって安心出来やしねぇだろう」
「すまねぇ、おっちゃん。クソ親父が居なくなって、露頭に迷ってた俺達の事を救ってくれたおっちゃんには感謝してる。だけど、だから悔しいんだよ。大事な家族一人守れねぇ不甲斐ない俺自身が、そんな俺達を捨てたあのクソ親父が、憎くて憎くて仕方ないんだよ!」
「・・・今日はうちんとこで寝てけ。そして、少し頭を冷やせ。良いか、これ以上は俺自身も擁護出来ないぞ」
駒木はそう番にくぎを刺した。本来ならば即刻少年院送りになっても当たり前の筈だが、そんな番を守り続けていたのは他でもない、駒木のお陰でもあった。
その為、駒木は数あった出世の道を自ら断ち、自分の生活費すら圧迫して番や真、そしてめぐみ達の為に充て続けていたのだ。
そんな駒木を見れば見るほど、彼に頼り続けている自分自身が情けなくなり、それと同じ位に父が憎く思い、その思いが強くなればなる程、番の喧嘩の頻度は増す一方
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