第21話 友と語る、セピア色の懐かしき出会い話
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う二度とあんな卑怯な喧嘩はしないと心に決めた。
「父ちゃん、俺・・・もうあんな卑怯な喧嘩しないよ。次は5人でも10人でも、真正面から喧嘩して、それで勝つよ!」
「良く言った。それでこそ男だ! だが、喧嘩をやり過ぎてくれぐれも怪我なんてするんじゃねぇぞ。そんな事したら俺が母ちゃんに怒られちまうからな」
等と、父と子でゲラゲラ笑いあった。それから祖父と母も加わり、狭い家の中で家族全員の笑い声が響き渡った。
そう、この時まではとても幸せな家族で居られたのだった。
そんな幸せな時間は、ある日唐突に終わりを迎える事となった―――
それは、母、めぐみが弟、真を出産して間も無くの頃だった。
「良いか、番。父ちゃんは暫く家に帰れなくなる。だから、その間はお前が母ちゃんを、そして弟を守ってやるんだ」
「何だ、父ちゃん。また仕事か?」
「まぁ、そんな所だ。良いか?」
「おう、任せておけって」
この時、番は父の言葉を信じていた。そして、父はすぐに帰ってくる。そう信じていた。
だが、父が家を離れてから1年、2年経っても連絡の一つもなく、徐々に番は不安になり始めた。
更に、元々貧乏だった轟家に置いて、稼ぎ頭でもある父が居なくなった事は大打撃を被る結果となってしまい、しかも育ち盛りが増えた事もあって生活は一気に苦境に立たされる事となった。
祖父は、それから一心不乱に働き続け、母もまた子供たちを飢えさせない為にと細々とパート業務を行い始めた。
それでも、番は父の言いつけを守り、幼い弟の面倒を見ながら出来る限りの家の手伝いをし続けていた。
何時か、父が玄関から現れて、また楽しい時間が過ごせる。その日を夢見ながら。
そんな番の心を打ち砕いたのは、祖父の突然の死の報告だった。
「番、お爺ちゃんが・・・お爺ちゃんが・・・」
「嘘だ、嘘だよねぇ。母ちゃん! 爺ちゃんが、爺ちゃんが死んじまったなんて・・・」
信じたくなかった。だが、祖父が運ばれた病室に着くと、其処には真っ白な布を顔に乗せ、二度と動かなくなってしまった祖父の最期の姿だった。
あんなに強くて、頼れる存在だった祖父が、番とめぐみの前で物言わぬ死体となって目の前に現れた。
更に、悪い事は続いた―――
祖父の突然の死の続いて、今度は母が倒れたのだ。
元々番の母は心臓が弱かったらしく、父の失踪に続き、祖父の死により母は更にパートの量を増やし、必死に働き続けた結果、無理が祟り職場で突然倒れてしまったのだと言う。
「兄ちゃん、母ちゃん何時になったら元気になるの?」
「・・・・・・」
幼い真の問に、番は答えられなかった。分からなかったからだ。何時になったら母が元気になるのかと言うのもそうだが、それ以上に、此処まで家族が苦しんでいる
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