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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Bパート 】
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内でぼやく。
以前、20年ぶりにブリューヌとジスタートが事を構える『ディナントの戦い』の野営地で、ザイアンとティグルの間にはいり手ほどく仲裁したマスハスらしい感想だ。
ぐんずりとした体格の初老貴族が推測する通りだった。
これまでザイアンは他人を思いやる行為をした事がなかったし、気に掛けることもなかった。しかし、あのアルサス襲撃戦の敗北から続く、長い放浪旅が彼を変えた。ザイアンはこれまで考えたためしのないことを、繰り返し考えた。
それこそ、ブリューヌの端から端まで渡り歩くほどの、腐るほどの時間が生まれたからだ。

それなら、私は……エレンはどうでしょうか?

リムアリーシャ――今だ自分は『フィグネリアにヴィッサリオンを討ち取られた』という現実に絡めとられている。
ティッタとザイアンはまるで……先ほどの自分とフィグネリアに重なっているのではないか?もしくはその逆なのか?
再び訪れた沈黙に対し、リムは懸命に言葉を探す。軍議の理屈理論は山ほど熟知しているのだが、こんな時に何を言ったらいいのかまったくわからない。

「……貴方が……『銀閃の勇者・シルヴレイヴ』の……シシオウ……ガイ殿……ですね」

ザイアンの丁寧な物言いに、凱は目を見開いた。かつて「殺せって言ってんだよ!!」という獣のような遠吠えの面影は感じられない。

「あなたに……会いたかった」

震えるような声から絞り出された言葉。
ザイアンにとって、それは『喪失』から生まれた、ささやかな『流星』にして『希望』だったのだ。










◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇










「―――――あなた方は本気なのですか!?父上……いや、『魔王』と戦うと」

ザイアンは言いさして絶句した。今回のブリューヌ内乱について、凱はザイアンに説明したのだ。
ほぼフェリックス政権の置かれたブリューヌを開放する為に、ティグル達を救出して王都ニースを取り戻す。そのことが銀の流星軍が解体せずに、ブリューヌ勢力圏侵入を伺っている理由だ。
もちろん、銀の逆星軍からすれば、銀の流星軍のような『解放軍』がいつまでも存在されては困ることになる。だが、ムオジネルやザクスタンのような傍観国からすれば、彼ら銀の流星軍の選択は蒸気を逸したものに見えるだろう。

――民草に非道を働く魔王を穿たん『流星』が、ブリューヌに真の平和を取り戻す。

理由はいいが、それですべての流星が砕かれては意味がないではないか?
だが、そんなことはもちろん凱にも、ここにいる全員にも自明のことだった。凱は静かに頷く。

「ああ。一番過酷な『道』だということは……わかっている」

二人きりになった凱とザイアンは互いにそんな話を交わしていた。このザイアンという青
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