第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Bパート 】
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て――崖に転落したのを、対象者である凱に助けられた。本来なら飛翔竜技である『風影』を用いれば、この程度の崖など難なく脱出できたはずだ。
なのに、凱はそれをしなかった。その理由は凱本人から語られる。
「仕方ないさ。銀閃の力を使えば俺達を警戒する戦姫や銀の逆星軍が感化して行動に出てしまう。ヴィクトール陛下は戦姫様に打診してくれるといったが、当面日数を有するはず。そういう事で『竜技』はしばらく控える」
まだ戦姫の正邪が掴めない故の結論だった。フィグネリアとて、知己の戦姫が一人いるのだから、凱の判断はある意味では当然と言えた。
無論、銀の逆星軍の間者とて例外ではない。
「……フィーネ」
唐突に呼ばれたフィーネは、ゆっくりと凱に振り返る。
「もう俺達は――止まることを許されない」
このとき、フィグネリアは『大いなる時の流れ』を直に感じ取っていた。
それは、この場にいるもの……いや、大陸国家全ての運命を決定づける日だということを――
時代は――今この時を以て、再び流れようとしている。
【二日後・ジスタート領内・ライトメリッツ付近郊外・銀の流星軍陣営地】
ジスタート王から『書簡』という通行許可証をもらった凱は、最大走力で銀の流星軍へ帰還した。天然自然の障害物がある公国周辺を経由するより、街道整備の整っている王都経由のほうが移動経路として申し分ない。多少遠回りだったとしても、夜通し馬車という交通機関を利用すれば、時間損失を補うどころかお釣りがくる。
実の所、ジスタート7公国において直接戦姫同士の国は隣接していない。直接的による公国間戦争を防ぐ為に、公国と公国の間に王家直轄領が敷かれている。そこからなら王家発行の『書簡』が大いに働いてくれる。そう判断した凱の行動は実に早かった。それが僅か2日間で帰還できた要因と言えよう。
ただ凱に付き添っていたフィグネリアの心情は、複雑なものだった。
(会わずに済むなら、そうしたいんだが)
一応、凱の話によれば、この幕営の中にリムがいるようだ。
だが、顔を合わせないことは避けられない。凱も彼女と共に戦う以上、立場上彼女を紹介しないわけにもいかなかった。
決して気が重いわけではない。別種の気の迷いが足を重くしているだけなのだろうか?
彼女らにとって『敵』同然である自分が、なぜここに来て、何をしようとしているのか――
ただ、『決着』を付けたいだけなのか?何に対して、何のために、誰を追い求めて?
行きかう疑問が、渦巻く疑念が現れては頭の中で振りほどく。しかし、やはり迷いまでは振り切れない。
(フィーネの様子がおかしい……俺の思い違いか?)
凱は知らなかった。エレン
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