暁 〜小説投稿サイト〜
ゆきおがあたいにチューしてくれない
ついにその時が来るのか
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
静な部分が『確かにそうだ』と摩耶姉ちゃんの言葉を肯定し、私は不思議な踊りをなんとか止めたくて、テーブルに自分のおでこをゴツンとぶつけてうつ伏せた。でも。

「……へへ」
「?」
「ゆきおぅ……ニヘラァ……」
「よだれ垂れてんぞ」

 ダメだ。自然と顔がにやけてくる。このあとの……桜の木の下に行ったあとのことを想像して、顔がいやらしくにやけてしまう。

「へへ……えへへ……ゆきおぅ」
「とりあえずよだれ拭けよ」
「えへへ……へへ……ゆきおぅ……ゆきおぉお……ニヒッ……ウヘヘヘヘ」
「だめだこりゃ……」
「てやんでぃ……おうおうゆきおぅ……ほっぺたあったけぇぞぉ……くちびる、ぷるぷるじゃねーかぁべらぼうめぇ……グヒヒヒヒヒヒ」
「ただのエロオヤジじゃねーか……」

 摩耶姉ちゃんの諦めの声をバックに感じ、私は、後に来るであろう、ゆきおとのときめきの時間を想像して、ただただ顔をゆるめて、ドキドキすることしかできなかった。

 摩耶姉ちゃんに『あたしは先に帰るぞー』と食堂に置き去りにされてからも、しばらく食堂で一人で、気色悪いタコ踊りを踊り続けた。クスクス笑ってないで、誰か止めてくれよ。

 一度部屋に戻り、念入りに歯磨きをした私は、ゆきおの待つ、宿舎前……桜の木の下に向かう。お化粧はー……別にいいか。口紅つけて、ゆきおの唇につけちゃうのも、なんだか申し訳ないし。

――涼風ちゃんは元がかわいいんですから、
  ナチュラルメイクでもっとかわいくなりますよ?

 榛名姉ちゃんは常々そう言ってくれるけれど、私とゆきおは、そうやって取り繕う関係でもないしな。……でも、ちょっとはお化粧した方が、ゆきおは喜んでくれるのかな……どうしよう……まぁいいか。

 高鳴る胸なんて自分には無縁だと思っていたけれど、いざその時が来ると、やっぱり私も女の子だったようだ。心地良いドキドキを胸に感じながら、少しの不安と大きなワクワクに身体を委ねて、私は桜の木の下への道を急いだ。

 途中、金剛型のみんなの部屋の前を通った。

『雪緒くんは! 榛名がッ! 許しませんッ!!』
『ちょ……榛名……洒落になってない……』
『やめるのデス! 比叡がブラッドフェスティバルになってマス!!』
『榛名!? それ以上は比叡お姉様がッ!?』

 ドアの向こうからは、なんだかえらく大変そうな悲鳴が聞こえてきた。巻き込まれても面倒だし、聞かなかったことにして桜の木の下に向かった。


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ