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幻影想夜
第二十六夜「霧の中」
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「大、だからお前は彼女いないんだよ!」
「どうして俺のせいになるだ!」
「お前はいつも他の女に目移りして、結局は彼女をほったらかしにしてたじゃないか。」
「そりゃ違うって!女の方が俺をほっとかねぇだけだ!」
 男二人が今にも取っ組み合いの喧嘩にでもなるかのような雰囲気だが、そこに扉を勢い良く開けて女性が入ってきた。
「いい加減にして!また同じことで喧嘩するつもりなの!?ガラスや壁を壊す気なら、直ぐ様出てって!」
 その女性の気迫に驚き、二人は顔を見合わせて口を噤んだ。
 女性に叱られた二人の男…公司と大輔は幼馴染みで、保育園の時からずっと一緒の腐れ縁。入ってきた女性は公司の彼女の茜だ。
 ここはとある田舎にある公司の家。小さいながらも一軒屋で、公司と大輔はその二階の一室で口論していた。
 口論の発端は、他ならぬ大輔の浮気癖…。つい最近まで彼女はいたのだが、事もあろうに…他に二人の女とも関係を持っていた。それが彼女にバレて…修羅場と化した…。
 大輔の顔面には、その時の引っ掻き傷が生々しく残っている。
 だが、喧嘩になると公司も大概抑えが利かなくなり、それを止めるのが茜の役目の様になっていた。
 尤も…茜は体型に似合わず柔道の有段者であるからして、公司と大輔では到底敵いっこないのだが。
「わりぃ…。」
「すまない…。」
 目の前で正座する二人の男…何ともみっともないことこの上無いが、この二人はもう三度も大喧嘩をして部屋を壊している。常習犯と言って差し支えないだろう…。
 主である公司からしてみれば、自分の家だからと思っているのかも知れないが、茜からしたら彼氏である公司と過ごしてきた場所なのだ。正直…こんなくだらない喧嘩で壊されてはたまったものではない。
「全くもう…。大輔君、もう少し大人にならないと結婚は難しいわよ?」
「言われなくても分かってるっつぅのっ!」
 茜の言葉に、大輔は小声でブツブツと返したが…茜は目をカッと見開いて「何か言ったかしら?」と言うと、大輔は「い…いいえ…。」と冷や汗を流して答えた。
「まぁいいわ。で、公司。」
「えっ?僕も!?」
 今度は公司へと矛先が変わった。
「当たり前でしょ?もう三度もガラスを入れ替えて壁を修理してるのよ?もういっそ、家ごと買い直す?」
「い…いいえ…すみません…。」
 公司も冷や汗を流すことになった。
 男二人…何も言い返すことが出来ず、そのまましょんぼり俯くしか出来なかった。
 そして…二人は共に、彼女のことをこう思ってしまったのだ。

- まるで鬼のよう…。 -

「あら?今二人共、とってもステキなことを思ったかしら?」
「滅相もありません!」
 何故か二人の声がハモった。
 そんな二人を前に、茜は仕方無しと溜め息をつき「次はないわよ?
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