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ゆきおがあたいにチューしてくれない
涼風→ゆきお
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で、ほかのみんなにからかわれる度、比叡さんは『ひぇええ』と悲鳴を上げながら、姉妹たちに熱い抗議をしている。

 艦娘の私達が主役の物語……そしてそれは、主役の比叡さんがそんなに戸惑って恥ずかしがるほどの物語……なんだか色々と気になる。

「なーゆきおー」
「んー?」

 私は、今私の隣で、私が淹れた苦いお茶を、顔をしかめながら飲んでいるゆきおに、ちょっとしたお願いをしてみることにした。どうせ本を読むのなら、せっかくだから……

「あたいも読んでみたい」
「いいね。んじゃ榛名さんに……」
「だからゆきおが書いて」
「借り……て、ぇえ!?」

 あれだけたくさん本を読んでるゆきおだから、きっと書こうと思えばゆきおも書けるはずだ……と思ったんだけど、どうもそういうものでもないらしい。途端に、周囲に絹を割いたような悲鳴が響く。ゆきおの悲鳴って、なんで女の子みたいなんだろう? やっぱこいつ、女の子か?

「そんなにびっくりすることか?」
「そらびっくりするよ! ぼくが物語なんて書けるわけないじゃないか!!」
「だってゆきお、一杯本読んでるしー」
「読むのと書くのは全然違うよ!」
「でもあたい、比叡さんの話読んでみたいしさー」
「大体ぼくは話を書くほど比叡さんのこと知らないし! ファンてわけでもないんだよ?」
「んじゃ誰の話なら書けんだよー」
「誰って……そのー……えっと……」

 そこまで言うと、ゆきおは顔を途端に真っ赤っかにしてうつむき、もごもごと何かを口ずさむ。その様子がなんだか少々気持ち悪い。あたいと二人で一人なら、もっとハッキリ言えってんだっ。

 摩耶姉ちゃんを見ると……

「ニッシッシ」

 気色悪い笑みを浮かべ、私とゆきおを交互に見比べていた。なんだその『あたしは何もかもお見通しだぜーホホホ、愉快愉快(公家調)』とでも言いたげな顔は。ハラタツなぁ。

「と、とにかくッ!!」

 私の隣でおたおたわちゃわちゃしていたゆきおが、急に声を張り上げる。いつもに比べて、ちょっとか細い声だけど。相変わらず顔は真っ赤っかだけど。

「そ、その本は、榛名さんに借りるのが一番いいッ!!」
「えー……あたいはゆきおが書いたのが読みたいのに」
「無理ッ!! んじゃぼくは自分の部屋に戻るからねッ!!」
「えー……ゆきおのアホー」

 言いたいことを全部ぶちまけたらしいゆきおは、頭のてっぺんから湯気をもくもくと出しながら、私に背中を向けて食堂から出て行った。ちくしょう。もっとゆきおと話をしたかったのに……ゆきおのアホ。

 一方で、摩耶姉ちゃんは相変わらずニタニタと気色悪い笑みを浮かべながら、私のことをじっと眺めていた。

「なー摩耶姉ちゃん」
「あン? ニタニタ……」
「摩耶姉ちゃん
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