704部分:第五十六話 劉備、張角と会うのことその四
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第五十六話 劉備、張角と会うのことその四
「耳飾り。ちゃんとお店の人が預かっていて」
「いい店員さんで何よりだった」
「三人いたけれど三人共ね」
どうやら店員は三人だったらしい。
「あの顔は何処かで見たがな」
「三人共ね」
「世間には同じ顔の人間がいるというが」
「あの人達結構見るよね」
「全くだ」
「そうよね」
こんな話をしていた。そうして一行のところに来た。するとだ。
魏延はだ。右側の劉備を見てすぐにこう言うのであった。
「桃香様、どうされたのですか?」
「あっ、焔耶ちゃん」
右側の劉備はしゃがみ込んだまま魏延に顔を向けた。
「神楽さんの耳飾りはあったの?」
「はい、ありました」
こう劉備に答えるのだった。
「無事に」
「そう。それは何よりね」
「それはそうとです」
魏延はそっと劉備のところに来てその両肩を抱いて言う。
「こんな場所で座ったままではいけません」
「そうね。じゃあ」
「はい、すぐに立たれて」
「えっ、まさか」
「若しかして」
その魏延を見てだ。一行はすぐにわかった。
「焔耶はわかるのか?」
「どちらが桃香殿か」
「まさか」
「んっ?何かあるのか?」
魏延は彼女達の言葉に目をしばたかせた。そのうえで自分の後ろにいる彼女達を見て怪訝な顔と声でこう言うのであった。
「桃香様に」
「だから。前を見るのだ」
張飛がここでその魏延にいう。
「お姉ちゃんが二人いるのだ」
「ああ、よく似ているな」
魏延はその左側の張角を見て述べた。
「桃香様にな」
「どちらがどちらかわかるみたいね」
「そうね」
張梁と張宝もわからないことだった。
「この黒服の人って」
「姉さんかそうでないか」
「わからないか!?」
だが魏延はこう言うのだった。
「桃香様のこの素晴しさが」
「ふむ。焔耶は桃香殿を想うことこの上ないからのう」
厳顔がここで気付いた。
「それでじゃな。見分けがつくのじゃ」
「それって滅茶苦茶凄いですよ」
「一瞬でどちらがどちらかわかるなんて」
孔明と鳳統は声からだった。だが魏延はなのだった。
「これが焔耶さんのですか」
「桃香さんへの想いの強さなんですね」
「ううむ、よく聞けばだが」
趙雲はここで気付いた。彼女もようやくだった。
「声は確かにだな」
「ああ、違うな」
馬超もようやくだった。
「右の桃香さんと左の桃香さんでな」
「そこだな」
「声なんだな」
「ええと」
左の劉備が動いてであった。
「確かに私と声が違うけれど」
「そうよね」
右の劉備も言う。
「声はね」
「だから。私達は」
「別人よね」
「間違いなくね」
お互いもこんな調子なのだった。そしてだ。
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