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小細工
第二章
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りの喚声がかけられる。かつてはスラッガーだったが今ではもう見る影もない。威圧感も覇気も全く感じられない。
 その抜け殻がバッターボックスに入るのを観た。僕はそのうえで老人に話した。
「小笠原ですよ」
「ガッツじゃったな」
「今ではカッスと呼ばれてますよ」
「フリーエージェントとかで巨人に入った選手は多いわ」
 ヤクルトの広澤克実をはじめとしてだ。本当に多い。
 だがそれでもだとだ。老人はこう言った。
「しかし終わりを全うしたのはおらんのう」
「一人もいませんね」
「広澤は阪神で復活したわ」
 巨人に入った彼はそうなった。まさに。
「巨人ではあかんかったのう」
「全然でしたね」
「粗大ゴミじゃったわ」
 老人はバットを波立たせて振る小笠原を見て言う。かつてのスイングは何処にもない。
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