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驚きもせずにそう答えた。エディが愉快そうに唇を歪めて続ける。
「それなりの理由があるんですよ。この命令はーーいや、”依頼”はアストライア財団宛にでなく、セイラ・マス宛に封書で届きました」
そういうと、エディは懐から何枚かの便せんを取り出して寄越した。セイラは軽くそれらに目を通すと、ほとほと嫌気が差したように口を開く。
戦後、アルテイシアとしての身分が露見し、重ねてニュータイプとしての適性を示したセイラは、アムロと同じく反乱の可能性を恐れられ連邦軍の監視下に置かれていた。しかしその上でのある程度の活動の自由を認められたのは連邦にとっての利用価値があると見なされたからであろう。セイラは戦後ある筋から公益財団設立の話をを持ちかけられ、それに乗る形となった。戦災孤児の支援という活動内容は確かにセイラが決めたものだったが、流通する資金や人材の元をたどればすぐに連邦軍に結びつく。彼らの思惑通りに動かされていただけであるということは、聡明な彼女には簡単に理解できた。
「それでも出資者にはあらがえない。そうではなくって? ”命令”だとーーエディ、あなたがさっきそう口走ったのは聞き逃していないのよ」
「はは、痛いところを突かれましたーーああ、あとその手紙、読んだのならください。燃やさなきゃならねぇ」
つまりはアストライア財団という公益財団にセイラを釘付けにしておくことで、彼女の周りの人間関係・資金巡りを管理しておこうという魂胆である。正攻法でセイラを幽閉しておけばジオンの残党に反乱の口実を与えてしまいかねず、殺すことなど論外だった。それならばセイラにある程度の自由を与えて、彼女自ら連邦に依存しなければいけない環境を作ってしまえばいいのだ。実際の活動も戦後復興に役立つものであるし、今回のように連邦軍のデリケートな問題をもみ消すには、逆らうことのできない外部の傀儡を使役することが最も効率がよいのだった。
この段取りを考えた人物は相当の切れ者だとセイラは呆れながらもそう思った。そうして、あらためて便せんの文面を眺めてみる。
(東アフリカの戦争難民保護、か。ダカールでの戦闘の後処理ってわけね)
「私はだんだんと政治屋のようになってきているわ。自分でもわかるの」
手紙を放るように手渡しつつ、セイラは窓越しに曇天を見上げた。ひどく疲れた気分だった。エディがいつもの軽薄な笑みを引っ込めて、色を正した声音で返答する。
「あなたは政治には向きませんよ。あなたは信念の人だ」
その言葉に、意外なものを聞いた気がしてセイラは座席に埋もれさせた体を少し持ち上げた。
「政治は信念からなるのではなくって?」
「違いますね。政治は時宜によって左右に泳ぐものだ。だけれどあなたは左右にはぶれることがない。いい意味でも悪い意味でもね。芯が一本通っていて決して動かない。バカ正
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