@
[2/5]
[1]次 [9]前 最後 最初
の痛くなるような知らせが上塗りしていく。
『それでは次のニュースです。先日ダカールで開催された地球連邦議会以降、初めて政府機関による政治意識調査が行われ、その結果が今日になって発表されました。調査結果によりますと、連邦市民のティターンズ支持率が同組織発足後初となる過半数割れを起こしたことになります。社会学者のミナカ・ユンカース氏はこの結果はエゥーゴ側代表者として登壇したクワトロ・バジーナ大尉の演説・及び地元テレビの報道による影響によって喚起されたものであり、今後もエゥーゴ支持者は増えていく見込みである、とのことです。
クワトロ大尉は演説の中で旧ジオン公国軍大佐で伝説的英雄であるシャア・アズナブルを自称し、同時に自らがジオンの遺児、キャスバル・ダイクンであるとの内容を公表しましたが、その信憑性については現在慎重に議論が重ねられています』
その時の演説はセイラも職場で見ていた。普段彼女はテレビを見る習慣がないのだが、部下に無理矢理デスクから連れ出されて休憩室のテレビに向かった。休憩室はたばこの煙で白く霞み、集まった人の熱気でひどく暑かった。数十人は押し掛けていただろうか。何事かヤジを飛ばしながら、そのテレビの中の人物を指さしては喧々囂々の有様だった。最初は怪訝な表情だったセイラもスピーカーを通して流れる声に何かを感じると、群衆をかき分けて一番前に陣取った。
癖のある金髪と切れ長で青い瞳、やや鋭角でスマートな雰囲気の顎。紺色のスーツに身を包んだその男の口調はかつてのジオン・ダイクンと酷似した、誇張と例示を織り交ぜた巧妙なものだった。七年前に再会した時とは違いずいぶんと痩せて骨格が角張り年を重ねた印象だったが、それでも妙な色気と妖艶さを兼ね備えている。危険な香りのする魅力、とでも言うのだろうか。
(議論なんてするまでもない。あれはキャスバル兄さんだった)
身振り手振りを大きく使い、モニターに写るモビルスーツを指し示してティターンズを指弾する男の姿。それを記憶から呼び起こし、セイラはあらためて思いを言語化した。
「兄さん。アムロ。あなたたちは本当にそれでいいの?」
小さく呟く声がラジオのノイズに紛れて消える。
アムロ・レイ。かつてセイラと共にホワイトベース隊に所属し、一年戦争を生き抜いたニュータイプの少年。今や成人し一人の人間として生きる彼は、再び戦場に戻ることを選択した。現在のセイラと同じく半幽閉状態でありながら、警備の目を盗み反ティターンズ組織に合流したらしい。
かつてセイラの目の前で死闘を繰り広げたアムロ・レイとキャスバルーーシャア・アズナブルが、今は同志であるということに彼女の感覚的な理解は追いつかなかった。そもそも戦場を経験したセイラにとっては、もう一度兵士になるという選択肢はありえなかったし、一度命のやりとりをした相手と肩
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ