第71話<イッショー・ケンメー>
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うなるのも運命なのだろうな」
意味深なことを、ぼそっと呟く父親。
その言葉に深い背景があることに気付くのは、ずっと後になってからのことだ。そのときの私には敢えて父親に突っ込んで聞く余裕は無かった。
私は二人に言った。
「じゃ、休ませて貰うね」
「ああ……そうしろ。この子は3時に交代するそうだ」
「うん」
私は和室の端に空いていた畳の上で軽くタオルケットを羽織って横になる。近くを見ると……北上と日向が寝息を立てていた。
業務(軍務)での関係しかない男女が同じ部屋で寝るなんて普通は有り得ないことだ。もっとも艦娘は厳密には人間ではないのだから女性(異性)ではない。
だが私は、こういう状況でも不思議と艦娘たちに変な感情意識は抱かなかった。それは異性と言うより同じ志を持つ同志に近い。人間で言えば兄弟姉妹という関係だろう。
そんなことを考えていたら、意識が遠退いていく。
『司令』
ふっと艦娘の声がしたようだ。いや、これは夢だろうか?
『司令、ずっとお守りします』
その声は日向のようでも、秘書艦のようでもあった。
(きっと夢だな)
何となく私が横になったことを認識している艦娘が数名、居るような気がした。その姿勢に私は『忠誠』という言葉を連想していた。
気が付いたら、もう朝だ。
癖という物は恐ろしいもので、いつも起床する05:30には自然に眼が覚めた。実家だから、もっと寝ていたい気持ちもあったが……そうだ、今日は艦娘が居るんだ。そう思うと私は上体を起こした。
台所の方から炊事をする音が響く。見ると既に秘書艦の祥高さんと日向は起きていた。
そして母親の後ろ姿もあった……二人の艦娘は母親の家事の手伝いをしているらしい。
私の周りでは、その二人の艦娘以外は全員寝ているようだ。
ただ、そうやって安心して寝ていられる艦娘たちの緩んだ雰囲気に私は何故か逆にホッとするのだった。
(私の実家も一種の『母港』だよな)
そんなことを思いながら立ち上がって自分の帯を締め直す。
ゆっくりと和室にある座卓に腰を降ろした。それに気付いた日向が声をかけてくる。
「おはようございます司令。すぐ、お茶を入れます」
「ああ」
昨夜、あれだけバカやっても押さえるところは、きっちりするんだな。私は彼女の芯の強さに改めて感心した。それは彼女の隣に立っている祥高さんも同様だろう。
結局こういう日常の些細な部分から指揮官は兵士たちの任務遂行の信頼度を量るのだ……と兵学校で聞いたような覚えがある。
艦娘といえども軍人に違いは無い。それは一種のサムライ……あるいは志士というべきか。
(サムライか)
そういえば、この二人は艦娘の中でも特に真っ直ぐだな。
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