始まりの遭遇
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皿に乗った上手そうな菓子に手を伸ばし……
「大変ニャー!」
……たところで邪魔が入ってくれた。樽に乗ったアイルーだ。陣笠に外套を着ている。……俺と似たような格好をしているな。
「まぁ、そんなに慌てて。どうかなさいましたの?」
「カンナさん達から救援要請ニャ! 赤紫の狼煙が上がったニャ!」
赤紫の狼煙……救援、増援の要請の合図だ。
「案内してくれ」
俺は愛刀を手にしてアイルーに話しかける。
「行って下さるんですの?」
「他に誰かが居るんなら任せても言いが、コイツがいつ頃に救助要請を受けたか分からん。それからここまで来るのにどれだけ掛かっているのかもだ。なら、今聞いた俺が行った方が早い」
俺の言葉に村長は満足そうに頷く。
「頼むぞ。たった今来たばかりだから俺には土地勘が無い。全力で走れ。足の早さには自信がある」
「任せるニャ!」
アイルーはそう言って樽の上に乗って脱兎の如く走り出した。
「では行って来る」
村長の言葉を待たずに樽アイルーを追いかける。救援が間に合えばいいんだがな。
「お気を……本当に速いですわ……」
お気をつけて……と言おうとした所で、あの青年ハンター、ヴォルフ・ストラディスタは既に見えなくなっていた。
あのアイルーは宅配・郵便担当で、速さと正確さを売りにしていた。足の速さでは定評のあるアイルー達の中でも指折りに速い。それは人間が追いつける速さでは無い。だが、あの男はそれに容易に追いつけるのではないのか?
「……異端の剣でしたわね。その担い手ならば……」
村長は彼の持っていた刀を思い出した。
片手剣にしては長く、太刀にしては短い。
その特徴的な刀を手に、獣染みた俊敏性と変幻自在の体術。その担い手の動きは最早、人間業ではないとすら言われている。
僅かながらも幼少期を知っている村長としては、何が彼を強くしたのか気になるところではあったが、今は救援を要請した者達の無事を祈るばかりであった。
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