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人狼と雷狼竜
始まりの遭遇
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 目の前のその巨獣は、黄土色の甲殻に覆われた強靭な四肢を持ち、頭から天を突くような鋭い角が二本伸び、その眼は射抜くような鋭い眼光を放ち、碧い鱗と白い体毛にに彩られた全身からは、何かが弾けるような鋭い音が鳴り始めていた。
 その姿から溢れ出る、雄雄しさ。力強さ。それはまさしく竜の眷属のものだった。
 互いに睨み合い、双方共に動かない。人間は刀を構えたまま、竜は人間を睨み据えたまま……ただ、吹き荒ぶ雨の音だけが、世界を支配していた。
 不意に閃光が走ったその瞬間、二つの影が交差した。
 落雷の如く轟音と共に、竜の右前足が地面を打ち砕いた。
 その破壊力は破砕音と共に凄まじく、人間が立っていた岩場その物を粉砕し、破片を宙へと舞い上がらせていた。
 人間の姿は無い。竜の一撃で土くれの如く粉砕されたか……
 竜が反対側へと振り返った。その視線の先には脱兎の如く走り去る荷車があった。先程自分に衝突しそうになっていた、アレだ。
 その荷台に、先程の人間が乗っている事を目にした。竜が前足を振り上げたあの一瞬を、あの人間は撤退の機会に生かしたのだ。
 人間が逃げたのか、竜が生き延びたのか……それは果たして……
 竜が咆哮を上げる。
 何処か哀しげな……それでも孤高の誇りを含んだ咆哮を、荷車にて息を整えていた人間は、聞き届けていた。



「まぁ、それは大変でしたわね?」
「その通りだが得るものはあった」
「まぁ、それは頼もしいですわ!」
「……余計な期待はしないことだ。落胆せずに済む」
 目の前の糸目が特徴的な竜人族の女性……妙は期待を抱きつつある糸目の村長を前にして、俺はこう答えるのがやっとだった。
 俺の名はヴォルフ・ストラディスタ。しがないハンターの一人だ。
 あの後ユクモに辿り着いた俺は、こうしてユクモの最高責任者に挨拶に行った。事務所は(もぬけ)の殻で探すのに苦労した。
 まさか、外の売店で茶と団子で優雅なひと時を過ごしていらっしゃるとは思いもしなかった。
「まぁ。あの可愛らしったヴォル君がこんなに無愛想になってしまいまして……少し悲しいですわ」
「そんな昔の事、覚えていない」
 俺はこの村……ユクモ生まれで、物心付く前はこの村にいた……らしい。
 何分、三つの時に母が急死してからは元々流れ者だったらしい親父と共に旅に出ていた為に、この村の事など何一つ覚えていないのだ。
 俺の最初の記憶は狩りの最中の記憶だ。親父と共に色んな所を旅して回った。それは、六つの時に親父が40人以上を動員した絶対強者討伐作戦での負傷が原因で死亡してからも、一人でアテの無い旅を続けてきた。
 ついこの間まではこの大陸の……丁度このユクモの反対側に居たのだ。もっとも、街に安宿を荷物置き場として借りただけで、専らモンスターと巣窟であ
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