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歌集「春雪花」
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 いたむ風に

  想い棚引く

   君の影

 秋ぞ匂いて

   恋しかるらむ



 激しい風に木々が揺れ…傾きかけた陽射しに目を瞑る…。

 故郷では…今の時季にこんな激しい風は吹かなかったが…。

 そう思った刹那…彼のことが頭を過る…。

 これから益々物悲しい季節となるのに…今からこれで暮らして行けるものだろうか…。

 辺りには秋の香りが漂い…より一層、彼が恋しくなってしまう…。



 人知れぬ

  思ひやなぞと

   秋の風

 吹くや遠けく

    逢ふ由もなし



 人知れぬ思いが何だと言うように…ただ秋の乾いた風が吹き抜ける…。

 それはどこまでも遠く…高き空の果て…。

 そんな秋の風のように…彼もまた遠く…どれだけ想おうと、会うこともないのだ…。


 違うか…会う理由さえ、最早ないのだな…。




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