紙舞
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よぎった縁ちゃんの屈託のない笑顔を、どう説明すればいいんだろう。
「少しは私のこと…その…そういう風に想ってくれるって。…あの、いいんです」
『あの子』の事も、知ってるから…。
俺の心を見透かしたようなことを口ごもり、俺の腕を抱きかかえるようにして静流さんは俯いてしまった。…俺からでは、今彼女がどんな表情をしているのかが見えない。
いつからだろうか。
静流さんはこれが云いたくて、俺が時折縁ちゃんに向ける視線も知っていて、ずっと溜めこんでいたのだ。ノートは切っ掛けでしかなかった。
―――俺は真綿で首を絞めるように、柔らかく二択を迫られている。
ふいに先ほどの奉の言葉が脳裏をよぎった。
『怖い女だよ、静流は』
その言葉と、今現在俺の肘を支配する柔らかいものの感触と、脳裏をよぎる縁ちゃんのすらりと伸びた脚とが激しい紙吹雪のように俺の思考を乱しまくる。結論など出よう筈がない、こんな短時間で。
「その、急な事で俺、その…」
「…それでも、いいから」
この子は俺の心が読めるのか。俺はそれ以上何も云えずに彼女に腕をあずけていた。
これが限りなく罠に近い状況と知りつつ、振りほどくなど出来る筈がなかった。それどころじゃない。俺は更に彼女の感触や体温を欲している。
俺は彼女の柔らかい指先を机の下で握りしめ、呟いていた。
「――――静流」
さらり、と静流の黒髪が俺の肩を覆った。
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