紙舞
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」
冬だというのに滂沱の冷や汗を流している俺の横で、奉がさもおかしそうに笑った。
「笑いごとじゃないだろ!?このままじゃ、静流さんが…」
「取り囲まれて虐められると?」
す、と奉の表情から笑いが引いた。
「今ここから逃れたら、そいつは永遠に静流から手を引くかねぇ」
「………それは」
「この場合、最悪の展開とはどういう状況だと思う」
俺は思わず黙り込んだ。…最悪の、展開とは。
「一人の時に、取り囲まれることだろうねぇ。今なら」
お前が居る。そう云って再び、奉はにやりと笑った。
「俺が…って、俺に出来る事なんて鎌鼬ぶん回すこと位しか!」
「居るだけでいい。…あの女、お前が思ってるほど弱者じゃないよ」
何を訳知り顔に。静流さんのヘタレっぷりはこの3カ月で厭というほど見せつけられてきた。あの子は自分に非がなくても、責められて平気でいられる子じゃない。
「だがここで逃げても最悪なのは変わらない…か…」
腹を決めたその瞬間、俺達の周りを4〜5人のちょっと可愛い女の子が取り囲んだ。
「八幡!!…あんたさぁ、翔にちくった?」
だん、と机を叩いた地黒な肌に明るい髪色の女の子には見覚えがなかった。…同じ授業を選択している筈なのに。
「翔に説教されたんだけど!!」
重ね付けした付けまつげさえ毟れば、そこそこ可愛い子だと思う。云っていることの理不尽さを差し引いても。そんなことを考える余裕があったのは、カンカンに沸いちゃってるその子以外の4人は、静流さんとその子を少し遠巻きに見ていたからだろう。分厚い付けまつげの下は、意外と気弱そうな普通の女の子達だ。
いかん、俺は何をぼんやりしているんだ。俺が静流さんを守らねば。
「なっ…何ですか…?」
思わず立ち上がった俺に寄り添うようにして、静流さんは目を上げた。震えて何も云えない状況を想像していたのだが、意外にも彼女は弱々しくも、しっかりと女の子に向き直っていた。
「この前は何にも云わなかった癖に、陰でコソコソちくるってさぁ、卑怯なんじゃない!?云いたいことあんなら、ハッキリ云いなよ!!」
「ちょっと、ほんとやめなよ…」
「タオが悪いって…」
彼女について来ていた女の子達が、おずおずと声をかけるがその声は届かない。…あぁ、激高しやすい子なのだな、と妙に納得がいった。激高してしまうと、自分に分がないことが分かっていても怒りが止まらないのだろう。
…迎え撃つという選択は間違いだったかもしれない。これはクールダウンを待つべき相手だった。
「大体さぁ、あんなノート全く役に立たなかったんだけど!なのに何であたしばっかり責められなきゃいけないの!?」
「責めてないじゃん…」
「次からコピー借りようよって云っただけで…」
次からコピーじゃねぇよ勉強しろよと思ったが、どうも俺が口を
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