紙舞
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問いは」
「あーね、主語、主語は…八幡ちゃん!」
「あと噂の内容を俺は知らない」
「知らないのかよ!?」
講義中の講堂に響き渡る大声で、今泉が叫んだ。教授の板書の手が止まる。口の前に指を立てて『静かに』のハンドサインを示して軽く睨む俺と、肩を竦めて大きな目をギョロっと巡らせる今泉。まるであの頃のままだ。俺は吹きそうになった。
「……お前と付き合ってるって噂」
「いっ!!??」
再び、教授の板書が止まる。振り向かれる直前に、俺と今泉は教科書で顔を隠した。
「し、知らないよ。第一、話すようになって3カ月も経たないし…」
「相変わらず、随分オクテなんだな」
「普通だろ」
「ナンパという言葉を知っているか」
「遠い世界のファンタジーとしてな」
「じゃ、俺が狙ってもいい?」
「ふざけんなお断りだ」
思わず口をついて出た。
「……え?」
「彼女は俺の3大パワースポットの重要な一角なのだ。そうでなくても最近きじとらさんが完全に奉の所有になって精神的に参ってるタイミングなんだよ。これ以上俺の癒しの場が削られたら残る手つかずのパワースポットは縁ちゃんだけになる」
「……お、おぅ……」
「な?やばいだろ?唯一のパワースポットが16歳とか。とち狂って手を出すと淫行でお縄になる案件だ。というかその前に奉の妹だぞ。視えざる地雷が透けて見えるようだろう。」
「うっわ…相変わらず、やばいなお前…」
「そうなんだ。やばいんだよ。だからこれ以上俺の脳内ハーレムを浸食しないでくれ」
「……お、おぅ……」
何故か今泉はその後、言葉数が極端に減り、感心にも真面目に板書を写していた。写メで。
天気予報が外れ、昼過ぎから冬の嵐が吹き荒れる陰鬱な午後だった。
数日前、幼馴染と偶然出会いLINEを交換して以来、ちょいちょい互いの近況を写メで送り合っていた。奉と真逆な性質の今泉は、少しうんざりする程マメで、毎日のように何らかのメッセージが届く。小学校のグループLINEなどというのもあったらしく、この数日で大勢の幼馴染の近況に触れることになった。玉群も誘う?と一応聞かれたが、断っておいた。あいつは夜中にLINEの通知音で起こされるのが死ぬほど嫌いらしいのだ。
それはさておき。
今日の講義が終わり、ノートを清書している静流さんを待ってスマホを弄っていると、今泉からLINEが入った。
「早速、旧交復活だねぇ」
奉が喉の奥で笑うのを無視してトークを表示すると、妙なテンションの書き込みが目に入った。
≪そこを離れろ。しくった。ごめん≫
「…ダイイングメッセージかよ」
何があった、と返すと、切羽詰まった誤字だらけの文面が戻ってきた。
≪八幡ちゃんのノート取った子を怒らせた。そっちに向かってる≫
「ほぅ…修羅場の予感だねぇ
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