紙舞
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い返せずにノート叩きつけられて帰ってくる気の弱さにも。
「えと、その…私のノート、何処が悪かったのかな…って」
「………へ?」
「縦にラインを引いて、用語解説欄にして…教授が『テストに出る』って云ったところは残さず強調線引いて、板書されなかったけど重要そうな事もコラム風に枠で囲って入れて、教科書と連動しやすいように参照ページは必ず書いて、分かりにくいかな…ってところはイラスト解説いれて、字も読みやすいようにペン習字検定1級とって…」
「…そのノート次の試験の時、よければ俺にも貸し」「おい、結貴」
奉に丸めたノートで殴られ、はっと我に返った。…いかん、そんなノート俺が欲しいわ、とか思ってしまった。
「何処が悪かったのか、そっちのほうが気になる、と」
「はい」
意外としっかりした返事が返って来たことに内心『!?』となりつつ、俺も次の講義の為に教科書を開く。人のノートを羨む前に、自分の講義ノートをしっかりせねば。
「じゃ、聞いてみたらいい」
「え」
「そいつらによ」
奉が口の端を吊り上げて笑ったような気がしたが、俺が顔を上げると、いつも通りつまらなそうに頬杖をつく奉がいた。
そんな事があってから数日。
俺達と静流さんは最近、つるんで行動することが多くなっていた。云いたくはないが、悪目立ちする三人組だ。いつもの場所でだべっていると、ふらりと静流さんが現れる。それを仏頂面ながら奉も受け入れる。そんな腐れ縁的な感じになっている。
「…でね、その坂に蝋梅が数輪、咲いてたの。なんかいい匂いするって思ったら」
「奉の実家にも咲いてるよ。今度、枝を貰ってこようか」
静流さんが、他愛無い世間話をしてくれるようになってきた。俺が相槌をうち、奉は聞き流す。その空気は意外に心地よく、俺もこの三人組を受け入れ始めていた。
「お、青島じゃね?」
聞き覚えのある声がして、軽く肩を叩かれた。語尾が僅かに上がる特徴的な喋り方だ。…誰だったか、とモヤモヤした気持ちのまま振り返った。俺の肩を叩いた男は、金色の髪を掻き上げてニヤリと笑った。
「あー、今泉!」
「そ、青島、今泉、の今泉だ」
俺たちは青島、今泉、青島、今泉とひとしきり繰り返して盛り上がった。
「…お友達、ですか?」
重度の人見知りを抱えた静流さんが、敬語になっておずおずと聞いて来た。…つくづく、金髪とかリア充が苦手な人だ。
「小学校の6年間、クラス一緒だった。出席番号が必ず1番と2番。いつも青島、今泉」
「そそ、青島、今泉!」
当時からサッカーチームに入ったり、男子が全員初心だった5年生時に既に女の子と仲良かったりと、将来のリア充ルートが透けて見えるような男だったが、不思議と気が合ってよく遊んでいた。ただ共通の友達が少なかった…というか俺たちの属性が違い過ぎて同じ遊び仲
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