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歌集「春雪花」
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 宵に来む

  月そ休むる

   雨雲の

 雫の濡らす

    袖そ片敷き



 夕も遅くに、空を雨雲が覆い始めた。

 これでは月も見えないだろう…月は雨雲の上で休んでいることだろう…。

 そんな雨雲より、ぽつりぽつりと雫のように雨が落ち始める…。

 今日は淋しい雨音を聞きながら眠るのだろうか…。

 古きは片袖を枕に寝たと言うが…私は雨雫のような涙で濡れた枕で眠るのだろうか…。


 彼を想い…流す涙で…。



 村雨に

  濡れし楓より

   落つる露

 想い零るる

     玉ぞ儚き



 時に弱く、時に強く降り注ぐ…そんな秋の雨に濡れたもみじの葉…。

 雨に濡れて撓む梢…葉先より零れ落ちる雫…。

 私の心は彼を想い…想い過ぎて…あのもみじより滴る露のように、外へと滴っているのかも知れない…。

 あぁ…人の命なぞ儚いものなのに…。


 どうしてこんなにも苦しまなくてはならないのか…。




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