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子供を戻すには
第一章
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                 子供を戻すには
 トロルは大層悪戯好きな妖精だ、ノルウェーのベルゲン近くの漁村の老人オスカー=ヘルナイセンもこのことを知っていてだ。
 村の子供達にだ、よくこう言っていた。
「トロルの悪戯には気をつけるんだ」
「さもないと痛い目を見るからだね」
「だからだね」
「そう、だからな」
 それ故にとだ、長く白い顎髭を右手でしごきつつ話すのだった。
「悪戯一つ一つにどうすえばいいか覚えておくんだ」
「お日様の光に弱いんだよね」
「トロルってそうだよね」
「だから追いかけられても朝まで逃げればいいんだね」
「そうすればいいんだね」
「そうだ、他には雄鶏の声を真似て鳴くんだ」
 朝一番に起きて鳴いて朝が来たことを知らせるこの鳥の、というのだ。
「そうしたらトロルはびっくりして逃げるんだ」
「だからだね」
「トロルが何かしようとしたらそうしてもいいんだね」
「雄鶏の声を真似る」
「そうすればいいんだ」
「そうだ、トロルは決して怖くはないんだ」
 確かに悪戯はするがというのだ。
「弱点も多いからな」
「うん、わかったよ」
「僕達も気をつけるよ」
「トロルに悪さをされてもね」
「そうしていくよ」 
 村の子供達もヘルナイゼンの言葉に頷く、白髪で腰が曲がっている九十歳を超えた老人は子供達の人気者だった。
 しかし村の小学校の校長であるグレゴール=トマットソンは生徒である彼等にこう言っていた、まだ三十代だが国立学校を首席で卒業し学者としても有名なインテリだ。
「あの人の言うことは迷信ばかりです」
「嘘なの?」
「ヘルナイゼンさん嘘吐きなの?」
「嘘吐きではないですが間違ったことを信じています」
 トマットソンは子供達にわかりやすく話した。
「そうした人なのです」
「それで僕達に間違ったことを言ってるの」
「そうなんだ」
「トロルはいません」
 トマットソンは妖精だのそうしたものを信じていない、もっと言えば無神論だ。神なぞ非科学的な話だとしか思っていない。
「神も天使も悪魔もです」
「何もいないんだ」
「この世には」
「そうです」
 確信して言うのだった、細長く形のいい顎と太い眉を持つ顔で。薄いブロンドの髪の毛を後ろに撫でつけアイスブルーの目には知性がある。背は高くすらりとしている。
「人間と生物だけがいます」
「じゃあトロルもいなくて」
「妖精もなんだ」
「お爺さんの言うことは間違っていて」
「そうだったんだ」
「変な話は信じないことです」
 トマットソンはこうも言った。
「そんなことを聞く時間があれば勉強をするのです」
「学校の勉強?」
「それを?」
「勉強にスポーツです」
 この二つに励めというのだ。
「その二つに励み道徳を学び」

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