第三章
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「心からな」
「まあドイツは極端かしら」
「極端過ぎる」
禁止された方としてはというのだ。
「全く以て」
「喫煙派の言葉ね」
「俺はまだいい」
アントンはというのだ。
「ポーランドに行って吸うつもりだ、だがな」
「それでもなのね」
「我慢出来ない奴はどうなる」
「まさかと思うけれど」
「そのまさかになるだろうな」
吸いつつ言うのだった。
「これからな」
「嫌な話ね」
「まあそれはおいおいわかる」
これから、というのだ。
「それもな」
「そうなのね」
「嫌な話になるぞ」
こう言うのだった、そして法として発効してだった。
ドイツ全土で煙草が吸えなくなった、これによりドイツで煙草の害がなくなったと思われたのだがそれがだった。
かえって悪くなった、何とだ。
非合法組織が煙草の密売をはじめたのだ、多くの喫煙家がこれに乗り忽ちのうちにドイツでは煙草の密売が深刻な社会問題になった。
それでだ、今更ながら喫煙の是非についての議論が起こった。
アントンは仕事から帰ってテレビのニュースを聞いて妻に言った。
「今日もか」
「ええ、今日はドルトムントでね」
ドイツ西部のその街でというのだ。
「密売組織が摘発されたわ」
「そうか」
「そうしたお店もね」
「それで何人も捕まったんだな」
「煙草も沢山押収されたわ」
「毎日だな」
それこそとだ、アントンは言った。
「煙草の事件が続いているな」
「そうよね」
「吸いたい奴は我慢出来ない」
アントンははっきりと言った。
「それこそな」
「そうなのね」
「だからな」
「こうしてなのね」
「犯罪組織が関わってな」
ドイツ国内のそうした者達だけでなくイタリアのマフィアやカモラも来ているし周りの国のそうした組織も群がってきている。
「そうしてだ」
「暴利を貪っているのね」
「そうなるなんてな」
「それこそ?」
「最初からわかっていただろ」
「けれどあの時は」
法案が出て成立するまでだ。
「そうしたことは」
「言わなかったな」
「ええ、賛成派はね」
「俺はこうなるって思っていた」
「犯罪組織が出て来て」
「それで儲けるってな」
ドイツ国内での煙草の密売をはじめてだ。
「麻薬みたいにな」
「麻薬は完全に駄目よね」
「あれは本当に身体を壊すからな」
そして精神もだ、だからこそ恐ろしいのだ。
「俺もしないだろ」
「絶対にね」
「あんなのはしたら馬鹿だ」
それこそというのだ。
「だから俺もしない」
「麻薬はそうよね」
「けれど煙草は違う」
麻薬とは、というのだ。
「そこまでいっていない」
「ずっとましだから」
「だからまだよかったんだ」
「煙草位は」
「そうだったんだ
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