第三章
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貴族へ
ペーターはハイデルバーグ家の申し出を受けこの家の養子となることを決意した、こうして彼は孤児院を出てハイデルバーグ家に入ったが。
その左右対称の見事な庭の先にある宮殿の如き屋敷を見てペーターは思わず息を飲んで言った。
「僕が通っている学校よりも」
「大きいか」
「はい」
迎えに来た先代伯爵、彼の祖父になる人物に黒い大きな車を出たところで驚きの声で答えた。
「そうです」
「そうか、だがな」
「この大きなお屋敷で、ですか」
「君はこれから住む」
「そうなんですね」
「そしてゆくゆくはだ」
先代伯爵、老ヨーセフ卿は彼にさらに話した。
「この屋敷全てが君のものとなる」
「僕の」
「ハイデルバーグ家を継ぐのだからな」
養子に入りそのことが決まっているからだというのだ。
「そうなる」
「そうですか」
「ではだ、この屋敷に住みだ」
そしてというのだ。
「君にはハイデルバーグ伯爵家を継ぐ為の教育も受けてもらう」
「わかりました」
貴族の教育と聞いてだ、ペーターはその目をきらきらとさせた。そのうえで屋敷に入り両親となる妙齢の美男美女と会った。絹の上等な服を着た二人は温厚で彼に対して終始笑顔であった。
部屋は彼が孤児院で五人で暮らしていた部屋の三倍はあり天幕の白いふかふかのベッドがあり椅子とテーブルもあり学問の為の机もあり。
大きな本棚には本が並べられていた、彼はその部屋を見て驚いていたが。
後ろに控える黒髪をオールバックにした背の高い痩せた執事が彼に言ってきた。
「粗末な部屋ですが」
「粗末じゃないですよ」
ペーターはその執事に驚きを隠せない顔で答えた。
「こんな凄い部屋が僕の部屋ですか」
「はい」
執事の返事は明瞭なものだった。
「これからは」
「そうですか」
「そして私は若旦那様お付の執事ロアン=アルノルドです」
「僕のお付の」
「そうです」
「あの、専属の執事さんとは」
「この家の方はどなたもですが」
専属の執事がいるというのだ。
「それにメイドも数人付きます」
「メイドさんまで」
「これが普通です」
「この家ではですか」
「そうです、ではご夕食までにお風呂と着替えを済ませて下さい」
「わかりました」
その風呂は大理石の大きなものでサウナもあった、その風呂に一人で入り着替えた服はトランクスに至るまで絹でありだ。食事もだ。
修道院のそれとは比較にならない、シェフが作ったものでフルコースだった。それを修道院のマナーで食べていると両親に言われた。
「うん、いいよ」
「見事なマナーです」
修道院の慎ましやかなそれはというのだ。
「充分です」
「そのままでいいよ」
「はい、よかったです」
「マナーも合格だ」
先代伯爵も笑みを
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