(現代語訳)竹取物語(口語訳)終
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
子で書いた。
<とても多くの人たちをお借りしましたけれど、月からの迎えを防ぐことはできませんでした。残念で悲しいことです。いつかお仕えしないかと誘われたのを断ったのも、このような面倒な事情があったためです。お断りしたときにわがままにふるまってしまったこと、おわび申し上げます。無礼な女だと思われたままなことが、心残りです。>
手紙の最後に和歌をそえた。
<天の羽衣を着る今まさにこの瞬間、あなたへの想いがあふれてきました>
書き終えると壺に入った薬とともに、高野大国へ渡した。
そしてかぐや姫は天の羽衣を身につけた。
そでを通した瞬間、さまざまな悲しい気持ちや、名残り惜しいといった感情が、すっと頭から消えた。
"天の羽衣を着た人"は、迷うことなく空飛ぶ乗り物に乗った。そばの天の人たちも乗り込み、浮き上がり、空へ昇っていった。
―その後。
爺さまと婆さまは、血がすべて涙に変わったかと思うほど泣き、苦しんだ。かぐや姫の残した手紙を見ても『何のために生きるのか。誰のために。何をする気にもなれない』と言って、病気になっても薬すら飲まずに、寝たままで毎日を過ごした。
軍隊を率いていた高野大国は帰り、かぐや姫を引き止めることができなかったことをミカドに詳しく報告した。不死の薬が入った壺と手紙も渡した。
ミカドは手紙を広げ、とても残念な表情をした。それからあまり食べ物も食べず、好きだった狩りにも行かなくなった。
ある日大臣たちを集めて『この辺りで、天に一番近い山はどこか』と訊ねた。ある人が『駿河にある山でしょう。ここからも天からも近いです』と答えた。
これを聞き、ミカドは壺に和歌をそえて調の岩笠にたくした。彼が選ばれたのは"月"にも"竹"にも関連した名前だったからである。ちなみに和歌はこのようなものであった。
<もう会えないと思うだけで涙が流れる。その悲しみの海に浮かぶような気持ちです。いただいた不死の薬も、使う気になれません>
調の岩笠は駿河にある山の頂上で、指示されたとおりに薬を燃やした。
彼はたくさんの武士を連れていったので、その山は『武士がいっぱいいる山』 『武士に富む山』 『富士山』と呼ばれることになった。
それは不死の薬を燃やした不二の『不死山』でもある。
薬を焼いた煙は、今でも山の頂上に雲になって見えることがあるという。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ