(現代語訳)竹取物語(口語訳)終
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『これは一体……そんな話は信じられない。竹の中から種のような大きさのあなたを見つけてから、私たち夫婦は今まで、こんなに立派になるまで育ててきたのだ。それを今さら迎えに来る人がいるとは。許せない』
爺さまも涙を流して怒りをあらわにした。かぐや姫はさらに話を続ける。
「月の都にもきっと、私の両親のような人がいるのだと思いますが、まったく記憶にございません。私はこの国に長く楽しく暮らすことができました。迎えが来るとわかっても、ちっとも嬉しくありません。悲しいばかりです。でも私の気持ちに関わらず、戻らねばならないのですわ」
二人は抱き合って泣いた。家に使えている者たちも、かぐや姫を小さいころからよく知っているので、同じように悔しがって泣いた。
噂はミカドにも伝わった。すぐにかぐや姫の家へ使いを送る。
使者は、悲しみのあまりヒゲがすっかり白くなり、腰も曲がり、たいそう老いたような爺さまに会った。涙のあとがくっきり残っている。
『なにか、ひどく悩んでいることがあるとうかがったのですが、本当ですか』と訊ねた。
『はい。次の十五夜のときに、月の都からかぐや姫の迎えが来るようなのです。それが残念で、悔しくて、泣いておりました。とても失礼なお願いだとは思いますが、どうかミカドのところから兵士をよこしていただき、そいつらを捕らえてはいただけないでしょうか』
爺さまは涙を流しながら頭を下げた。使者がその様子と言葉を伝えると、ミカドは真面目な表情でこう言った。
『たった一目見ただけの私ですらかぐや姫のことを忘れることができないのだ。かぐや姫と長年暮らしてきた翁の悲しみは相当なものだろう』
十五夜になった。ミカドは高野大国に命令して、かぐや姫の家を守らせた。軍隊は二千名ほどである。周りの塀に千名、屋根の上に千名を配置した。かぐや姫の家の使用人たちも武器を持ち、がっちり守りを固めた。かぐや姫は厚い壁の部屋に、婆さまと一緒に座っていた。
爺さまは安心して外で腕を組んでいる。『これだけの守りだ。けっして天から攻めてくる人にも負けないだろう』
屋根の上にいる人とは『なにかが見えたら、すぐ矢を撃ってくださいね』『こうもり一匹でも逃がしはしません』と会話を交わした。爺さまは満足そうに笑った。
しかし、かぐや姫は喜ぶどころかため息をついた。
「しっかり守って戦おうとしても、むこうの人々とは戦うことすらできないでしょう。弓矢だって役には立ちません。どんなにガードを固くしていても、あの人たちはたやすく開けてしまうでしょう。どんなに戦う勇敢な心を持っていたとしても、月の人たちが目の前に現れたなら、戦う気持ちがすっかり消えてしまうでしょう」
爺さまはその言
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