竹林の獣(2)
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『うぅ……痛いメェー』
痛そうに殴られた箇所をさする山羊。
ピノキオが「駄目ですよツギハギさん。相手は子供なんですから、殴っちゃ」と言っていたが、これが子供? 子山羊なのか?
『メェー』
そうは見えない。二本足で立ち、人間の言葉を話す山羊にしか見えない。
「ネェーネエ、姫に会いに行かないの〜? 行かないなら、アナタを逝かせちゃいますよ? アハハハッ♪」
『メェェェェ!!?』
無邪気に笑う赤ずきん 青ざめ恐怖に震える山羊
『わ、分かりましたメェー。
ど、どうぞ、こちらにお座りくださいだメェー』
と言いながら山羊が持ってきたのは人力車。
「お前が運ぶのか」
『心配しなくても大丈夫だメェー。仮免許中だけど「おい」』
全然大丈夫じゃなかった。
『悪いのはぼくじゃないんだメェー。イノシシさんの方なんだメェー。
ぼくは竹林交通ルールを守っていたのにメェー、突然横からイノシシさんが現れてぶつかってきたんだメェー。
裁判になってメェー、"猪は真っ直ぐに走る生き物だから無罪”って逆にぼくが悪いことにされたんだメェー』
「つくづく豚と相性が悪いんだな」
『メェー?』
猪突猛進。一般的には猪は真っ直ぐにしか走れないと言われているが、実は奴らは結構小回りが利く。角を曲がる事なんてお茶の子さいさいだそうだ。
仮免許中の山羊が運ぶ、人力車に乗り込み竹美姫とやらが治める千年魔京へと向かった。
日差しが差し込こまない、薄暗い竹藪の中を人力車は駆け走る。遠くに見えていた城が徐々に近づいてくる、ネオンでライトアップされた眩しい光が視界を奪う。
「まぶっ」
『着きましたメェー』
閉じた瞼を開けるとそこあるのは巨大な和風の城 軽く千本くらいはありそうな桜の木
『ベェーベェー』
その城に吸い込まれるように入って行く、黒い羊たち。
「あの羊共は?」
『あのお方たちはメェー、お客様だメェー』
羊が客の山羊が従業員か。
羊たちの跡を付いて行くように俺達も千年魔京の中へと入って行く。
「なんだ…これは」
入ってすぐに出迎えたのは、着物を着た女人の巨大な銅像。何故か上半身がなく下半身しかない。
『竹美姫さまの下半身像だメェー。中身もしっかり作ってるメェー』
「……興味ない」
行くぞと顔を真っ赤にしオロオロしているピノキオと、上京したばかりの田舎娘のように瞳を輝かせる赤ずきんを連れて奥へと歩き出す。
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