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俺の涼風 ぼくと涼風
番外編
熨斗をつけて返す
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…おぶっ……」

 マジックアームでノムラを拘束したまま、涼風と雪緒をチラと伺う。あたしの相棒とあたしの妹分は、互いに抱きしめあって、無事を確かめているようだ。二人共、格好が痛々しい。雪緒は特にひどい。

 一方のノムラはどうだ。榛名のマジックアームに腕をねじり上げられ身動きはとれず、前歯がもげた口から吐瀉物を撒き散らしてはいるが、二人に比べて綺麗なもんだ。腹立たしいほどに。

「ハァ……おぶっ……摩耶……」
「あん?」
「たしゅ……け……」
「心配すんなよ殺さねえから。そういう命令だしな」
「……たしゅけ……て」
「だから命は助けるって言ってんだろ。命は」

 あたしの言葉がうれしいのか、それとも痛みのせいなのか。ノムラの左目から涙が流れてた。このクソが涼風みたいに泣くことがとても腹立たしい。渾身の力で左拳をノムラの左目にぶつけた。

「人の相棒と妹分を散々かわいがってくれたんだ」
「……」
「それに、榛名との約束もある。しこたまぶん殴ってやるから泣いて喜べ」

 その後あたしは、涼風が雪緒をおぶって帰路についたあと、このクソをロープでがんじがらめに縛り、水面に投げ捨てて曳航してやった。正直、その段階で溺れ死ねとも思ったが、そこは任務だから仕方ない。だから、助けを求められる度に殴り倒しておいた。



 あの騒動からしばらくして、あたしと一緒に涼風を助けてくれた相棒は、静かに息を引き取った。自分がもっとも愛する涼風に、自分のカーディガンを託し、指輪を渡して。

……

…………

………………

「柄じゃねえなぁ……」

 間宮で買った豆大福が二つ入った紙袋を持って、あたしは軍病院前の桜の木の下にやってきた。今日はとてもいい天気。春先らしいぽかぽかとしたお日様の光が暖かく、風はまだ春先らしくてとても冷たい。外にいるのがとても心地良い。

 ベンチにこしかけ、風が吹く度にサラサラと鳴る、桜の木を見上げる。桜はつい最近まで満開のピンク色でとてもキレイだったのだが、今はその花びらもほとんど散ってしまって、緑色の葉っぱが、太陽の光を受けて、気持ちよさそうに輝いている。

 本当は今日、あたしは第一艦隊として出撃予定だった。事実、今しがた旗艦の涼風と第一艦隊は今、大規模作戦に駆り出されて、元気に出撃していった。今日もロケットスタートを決めたらしく、ドカンという爆発音と共に大海原に飛び出ていった涼風と、必死にそれを追いかけている他のメンバーたちの姿が見えていた。

 あたしは今日はサボりだ。出撃しようと思っていたのだが、あまりに天気が良すぎた。雲一つないし、空は薄水色でとても高い。お日様はポカポカとキモチイイし、風もひんやりと心地いい。

 だったら、サボりたくなるのも仕方ないだろう。提
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