番外編
熨斗をつけて返す
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ら……その結果もすべて飲みこんで、涼風を助けに行くという決断をしたあいつに、失礼な気がした。
だからあたしは、雪緒と共に涼風を助けに行ったことを、後悔したことは一度もない。
「なぁ相棒」
あいつは……あたしの相棒は、自分が大好きな涼風のそばにぴったりとくっついて、今も涼風を守ってる。あたしの相棒はきっと、いつの日か涼風に自分の支えが必要なくなるその瞬間まで、涼風のそばで、あいつを守り通すことだろう。
「涼風のこと……まだ暫くの間、頼むぜ」
我ながら柄じゃないとは思いつつ、ついぽそっと口ずさんだ。あいつならきっと……あたしの相棒ならきっと、キッとあたしの方を見て、『はいっ』て、小気味よく言うだろうなぁ。女みたいな顔してるくせに、そんなときだけは、えらく男前にさ。
視線を下げ、広がる大海原を眺めた。その海は、あたしの妹と相棒がこっそり抜け出したあの日のように、キラキラと輝いていた。
そして、今もあたしの頬を撫でる風は、あの日のようにひやっと冷たく、そして心地よかった。
紙袋からもう一つの豆大福を取り出し、それを口にほおり込んで丁寧に咀嚼した。その瞬間、海から吹く潮風が勢いを増す。それがまるで、あたしの豆大福を欲しがる、相棒からのブーイングのような気がした。
「だからよー。涼風に食わせてもらえってー。お前ら、二人で一人なんだろー?」
途端に風が止む。なんだよ。あたしに『二人で一人』って言われて急に恥ずかしくなったのか。あの日はあたしの前でさんざん抱き合って喜んでたくせに。
まぁいいか。相棒にそこまで催促されたのなら仕方ない。帰る途中に間宮で豆大福を二つ買って帰ることを心に誓い、あたしは豆大福の残りを味わうことに、全力を注いだ。
大海原を眺めた。第一艦隊の面々が戻ってきたらしい。作戦終了までがとても早い。さすがはあたしの妹分。以前と比べると、まるで別人のように頼もしい。
……そして、さすがはあたしの相棒だ。
妹と相棒の有能さに鼻高々な気持ちを感じつつ、あたしは口の中の豆大福を飲み込んだ。
終わり。
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