暁 〜小説投稿サイト〜
俺の涼風 ぼくと涼風
番外編
熨斗をつけて返す
[12/12]

[8]前話 [9] 最初
ら……その結果もすべて飲みこんで、涼風を助けに行くという決断をしたあいつに、失礼な気がした。

 だからあたしは、雪緒と共に涼風を助けに行ったことを、後悔したことは一度もない。

「なぁ相棒」

 あいつは……あたしの相棒は、自分が大好きな涼風のそばにぴったりとくっついて、今も涼風を守ってる。あたしの相棒はきっと、いつの日か涼風に自分の支えが必要なくなるその瞬間まで、涼風のそばで、あいつを守り通すことだろう。

「涼風のこと……まだ暫くの間、頼むぜ」

 我ながら柄じゃないとは思いつつ、ついぽそっと口ずさんだ。あいつならきっと……あたしの相棒ならきっと、キッとあたしの方を見て、『はいっ』て、小気味よく言うだろうなぁ。女みたいな顔してるくせに、そんなときだけは、えらく男前にさ。

 視線を下げ、広がる大海原を眺めた。その海は、あたしの妹と相棒がこっそり抜け出したあの日のように、キラキラと輝いていた。

 そして、今もあたしの頬を撫でる風は、あの日のようにひやっと冷たく、そして心地よかった。

 紙袋からもう一つの豆大福を取り出し、それを口にほおり込んで丁寧に咀嚼した。その瞬間、海から吹く潮風が勢いを増す。それがまるで、あたしの豆大福を欲しがる、相棒からのブーイングのような気がした。

「だからよー。涼風に食わせてもらえってー。お前ら、二人で一人なんだろー?」

 途端に風が止む。なんだよ。あたしに『二人で一人』って言われて急に恥ずかしくなったのか。あの日はあたしの前でさんざん抱き合って喜んでたくせに。

 まぁいいか。相棒にそこまで催促されたのなら仕方ない。帰る途中に間宮で豆大福を二つ買って帰ることを心に誓い、あたしは豆大福の残りを味わうことに、全力を注いだ。

 大海原を眺めた。第一艦隊の面々が戻ってきたらしい。作戦終了までがとても早い。さすがはあたしの妹分。以前と比べると、まるで別人のように頼もしい。

 ……そして、さすがはあたしの相棒だ。

 妹と相棒の有能さに鼻高々な気持ちを感じつつ、あたしは口の中の豆大福を飲み込んだ。

終わり。


[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ