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俺の涼風 ぼくと涼風
番外編
熨斗をつけて返す
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「榛名も……行かせて下さいッ……!!」

 まだ水面に立ってない榛名は、ダズル迷彩砲を含む自分の艤装を身に着けていた。提督に『お前の出撃は許さん』と釘を刺されていたのに。

「おい榛名。お前、留守番だろ?」
「イヤです! 榛名も助けに行きます!!」
「命令違反になるぞ?」
「構いません……ッ!!!」

 あたしの冷ややかな反論にも、榛名はいちいち声を荒らげて返答を返す。そんな榛名の様子を見て、あたしの直感が告げた。

「……ダメだ。連れていけない」

 こいつを連れて行ってはいけない。連れて行けばこいつは、ノムラを殺す。

「なぜですか!!! 艦娘でも何でもない雪緒くんは連れて行って……なぜ榛名は出撃してはいけないんですかッ!!!」
「もう一度、今回の作戦内容を思い出せよ。涼風の奪還と、もうひとつ重要な任務があったろ?」
「……ノムラの、捕縛ですか」

 涙目の榛名は、下唇を噛み、拳を必死に握りしめていた。よほど悔しいんだろう。拳だけでなく、体全体がプルプルと震えている。必死に自分を押さえつけてるようだが、その怒りと悔しさが隠しきれてない。

「ああ」
「それが命令なら……従いますから……ッ!!!」
「今の様子見てたら説得力ねえよ。正直、今のお前を連れて行っても、捕縛どころか見つけ次第主砲をぶっ放すお前しか想像出来ねえ」
「……ッ!!」

 あたしの指摘に対して押し黙る榛名を見て、こいつは自分でもその自覚があることを感じ取った。ギリギリと歯を噛みしめる音が聞こえてくる。

 こいつの悔しさは、あたしも痛いほど分かる。大切な姉二人が沈んだ元凶。大好きな妹分を一時は再起不能にまで追い込み、今また雪緒が助けてくれた涼風を、その毒牙にかけようとしているノムラ。そんなヤツが目の前にいれば、榛名じゃなくても殺したい衝動にかられるだろう。

 特に今、榛名は完全に冷静さを失ってる。こいつはとても優しい。そんなやつが、自分が大切にしているものを理不尽に壊されていった時……普段は怒りを押し殺す分、爆発したときの怖さと行動力は恐ろしい。

 今も、あたしの答えを無視して、榛名は体中を怒りでプルプルと震わせながら、主機を履いた足を水面につけようとしている。あたしは即座に主砲を向けた。これ以上の命令拒否は許さない。

「なにするつもりだよ」
「榛名も行くんです。これで解体処分になっても……ッ!!」
「無理に押し通るつもりなら、あたしも黙ってねーぞ」
「……」

 榛名があたしの目を真っ直ぐに睨みつけてきた。いつも澄んで綺麗な榛名の眼差しが濁っている。そんな状態の榛名を一緒に連れて行くわけには行かない。それに、榛名はあたしの大切な仲間だ。解体処分させるわけにもいかない。

 榛名の主砲がギリギ
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