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俺の涼風 ぼくと涼風
番外編
ぼくの決意とワガママ
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たとえ涼風には見えなくても、ぼくは、ずっと涼風と一緒にいるから。いつの日かぼくのことを忘れて、幸せな毎日を送れるようになるまで、ぼくはずっと、見えなくても、そばにいるから。

 ベッドの下に視線を落とした。今、ぼくたちが眠るベッドの下には、涼風には秘密にしている、指輪の制作キットを隠している。ぼくがまだ小さい頃、父さんが『惚れた女には指輪を渡すもんだ』て笑いながら言ってた。その時はまだ意味がよく分からなかったけど、今なら、父さんが言っていた事が分かる。

 ぼくは今、涼風に指輪を渡したい。誰よりも何よりも大切な涼風に、ぼくは自分の気持ちを渡したい。

 でもその指輪は、後に涼風を縛ることになるかもしれない。たとえその時は大切なものだとしても、いずれその指輪が、邪魔になる日が来るかも知れない。

 指輪を渡したいのは、ぼくのワガママだ。

 だから涼風。ぼくの指輪を邪魔に感じる日が来たら、その時は、渡した指輪は捨ててね。そうしたら、ぼくも涼風のそばから離れる。その時は、『二人で一人』から、『二人』に戻るよ。ぼくは消える。

 だから、涼風の薬指に、指輪を通すことを許して。そして、指輪を捨てるその日まで、涼風のそばにいさせて。

 指輪を渡した時、涼風は喜んでくれるだろうか……

 ぼくが姿を消した時……涼風は、怒ってくれるだろうか。『一緒にいなきゃだめじゃねーかべらぼうめぇ』とか言って、ぷんすか怒ってくれるだろうか。

 その時、一緒にいるはずのぼくのことを、感じてくれるだろうか。

 ……そしていつの日か、ぼくの指輪を捨ててくれる日が、来るだろうか……。

「すずかぜ」
「……」
「好きだよ。大好きだよ」
「……ギリッ」
「だからちゃんと……ちゃんといつか、ぼくの指輪は、捨てるんだよ?」
「……」
「ぼくのこと……ちゃんといつか、忘れるんだよ? それでも元気でやっていくんだよ?」
「……」
「大好きだよ……大好きだよ……すすかぜ……ッ」

 涼風は、何も答えてくれなかった。ただ、ぼくの隣で、安心しきって気持ちよさそうに、時々歯ぎしりをして、スースーと静かな寝息を立てていた。

 ぼくは、ぼくの右手首を握る涼風の右手に、自分の左手を重ねた。涼風の寝顔を眺めるぼくの視界が、徐々に狭まってくる。大好きな涼風と一緒に眠れる……その安心感は、ぼくの心を蝕む、死への恐怖も、涼風の隣からいずれ離れる悲しさも何もかも鎮め、胸に温かく、心に心地いいぬくもりを届けてくれた。

 その日ぼくが見た夢……それは、艦娘となって大海原を駆けるぼくと、そんなぼくのはるか先で、こちらを振り返り、楽しそうに満面の笑みでぼくに向かって手を振る、大好きな涼風だった。

――ゆーきーおー!!

――すずかぜー!!


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