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俺の涼風 ぼくと涼風
番外編
ぼくの決意とワガママ
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がとても怖いよ。助けて涼風。涼風は、ぼくが守るから。

 ぼくと涼風は二人で一人だから……涼風はぼくがずっと守るから。だから、ぼくを助けて下さい。涼風、ぼくを助けて。

「……ギリッ……ゆきお……?」
「!?」

 涼風のとても綺麗な口が動き、舌っ足らずな声でぼくの名を呼んだ。ぼくの嗚咽が大きくて、目を覚ましてしまったんだろうか。慌てて涙を袖で拭こうとするけれど、右手は涼風のほっぺたの下敷きになってるし、左手はいつの間にやら涼風の右手に掴まれてる。身動きが出来ない。まずい……泣いてる顔を見られる……

「す、すずかぜ?」
「んー……ゆき……お……」
「……?」
「やったな……まが……れた……」
「……?」
「んふー……あたいと……ゆきおは……二人で……ひと……」

 たどたどしい、舌っ足らずな声でそう言う涼風は、嬉しそうにニッコリと微笑んだ後、またギリギリと歯ぎしりの音を鳴らしつつ、安心しきった寝顔に戻った。

 涼風は、夢を見ているみたいだ。それも、ぼくが涼風の艤装を借りて、演習場に立った時の、あの、とても楽しかった日の夢を。

 ぼくはただの人間なのに、涼風が貸してくれた艤装が作動した理由は、今もよくはわからない。

 でもあの日、涼風は確かに、ぼくを艦娘にしてくれた。大海原に連れて行ってくれたときと同じく、涼風はぼくに勇気をくれて、ぼくの背中を押してくれて……そして、ぼくを憧れの艦娘にしてくれた。

 ぼくは確かにあの日から、改白露型の4番艦、涼風になったんだ。

 涼風が、ぼくを涼風にしてくれたんだ。憧れの、涼風に……。

 そんな涼風を苦しめている人がいるというのなら……泣いてちゃいけない。助けてなんて、言ってなんかいられない。

 涼風が、ぼくの左手を離し、ほっぺたで下敷きにしている右手の手首を優しく掴んだ。

「……ゆきお……」

 その途端、涼風の寝顔がフッと柔らかく微笑む。涼風のこの笑顔を、ぼくは守りたい。

「……そうだね。泣いてる場合じゃないね」
「……んギッ……」

 自由になった左手の袖で、自分の涙を拭った。鼻をずるずると鳴らし、鼻水を全部吸い込む。さっきまであんなに滲んでいたぼくの視界は今、輪郭をくっきりと取り戻し、涼風の寝顔を鮮明に映しだした。

「……すずかぜ、ぼくはね。そのうちいなくなる」
「……」
「でも隣にいる間は、絶対に守るから」
「……ギリッ」

 鼻の奥が再びツンと痛くなる。涙が溜まってくるけれど、びっくりするほど視界はクリアだし、不思議と喉も震えない。

「そして、隣にいられなく……なっても」
「……」
「ぼくは、涼風といっしょにいる……から……」
「……」
「見えなくても、一緒に……いるから……ッ」

 
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