番外編
ぼくの決意とワガママ
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
子もなければ、笑いをこらえてる様子もない。ホッと一安心して、再び涼風の頭に触れた。
――だから涼風……
涼風のやわらかいほっぺたに、右手で優しく触れる。『んん……』と声を上げた涼風は寝返りを打ち、顔がこちらを向いた。ほっぺたに触れるぼくの手を、下敷きにした。
「……!?」
「ギリっ……!!」
ぼくの右手に、涼風の歯ぎしりの感触が走った。涼風のほっぺたはとても心地いい。あたたかいほっぺたが、ぼくの右手を包み込む。ちょっとびっくりしたけれど、そのあたたかさはとても心地よくて、いつまでもいつまでも、触っていたい。
――助けて
……でも、そう遠くないいつか、ぼくは、このほっぺたに触れられなくなる。
自由になっている左手を動かし、涼風のあたたかい右手に触れた。その手もとても温かくて、触っていて胸がいっぱいになる手で……ずっとずっと、繋いでいたい手で……
――ぼくを助けて
でもその手も、いつの日か、離さなきゃいけない手で……
「……涼風」
目に涙が溜まってきた。じっと見つめる涼風の顔が滲んでくる。鼻が垂れてきて、息がしづらくなってきた。
「けふっ……すずか……ぜ……」
「……」
「涼風……すずかぜ……」
ずっと涼風の隣りにいたいのに……こうやって、ずっと手を繋いで、ずっと、一緒にいたいのに。
「涼風……ひぐっ……」
「……」
「一緒に……けふっ……ずっと一緒に、いたいよ……」
ずっと隣にいたいのに。憧れの涼風の隣で、ぼくも涼風と、ずっと一緒に、笑いたいのに……守りたいのに。手を繋ぎたいのに。
「涼風……ひぐっ……」
「……」
「涼風と……離れたくないよ……一緒に、いたいよぉ……」
「……」
死にたくないよ涼風……ずっと、涼風と一緒にいたいよ。
「守るから……ぼくが、ひぐっ……ずっと涼風のこと、守るから……」
「……」
「だから、助けて……ぼくを助けて……一緒にいさせて……涼風ッ」
助けて涼風。ぼくは、ずっと手をつないでいたい。一緒にお菓子を食べて、幸せを感じて、そして一緒に本を読んだり、元気なきみに振り回されたりしたいんだ。
もう、あんな苦い薬も飲みたくないよ……『艦娘になるため』って自分に言い聞かせるのも疲れた。死にたくないよ……一緒にいたいよ涼風……
「こわいよ……死にたくないよ……ひぐっ……一緒にいたいよ……」
「……」
「すずかぜ……助けて……けふっ……助けてよぉ……すずかぜ……っ」
涙が枕にぼろぼろとこぼれ落ちた。すやすやと眠る涼風の寝顔が、遠く離れた場所にあるように感じた。鼻水が止まらない。咳き込んで、うまく呼吸も出来ない。
……怖い。怖いよ。涼風から離れるのが怖い。死ぬの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ